Search this site
お気楽妄想系のページf^^; 荒らし投稿がつづくのでコメントは承認制としました。
ハイティンク・ポートレート(その3:ハイドン)

・ハイドン:オラトリオ「四季」 Hob.XXI:3
・ハイドン:オラトリオ「天地創造」 Hob.XXI:2

 

独唱:(四季)ジュリー・カウフマン(ソプラノ)、ヘルベルト・リッペルト(テノール)、アラン・タイタス(バス)。(天地創造)カミラ・ティリング(ソプラノ)、マーク・パドモア(テノール)、ハンノ・ミューラー=ブラフマン(バスバリトン)

合唱:バイエルン放送合唱団

ベルナルト・ハイティンク指揮、バイエルン放送交響楽団
 

録音:1997年11月27,28日(四季)、2013年12月19,29日(天地創造)
BR KLASSIK 900174-04/05,06/07

 

ハイティンクがBRSOを振ったライヴ集から、今回はハイドン晩年の傑作オラトリオ2曲。実はどちらもこれが初の鑑賞でした。知らない曲について書くので、最低2回は聴いておきたいと思って、それが2枚組×2で、なかなか時間が取れませんでした。というわけで、演奏というよりも曲の感想になりました。


作曲順は「天地創造」の方が先。とはいえどちらも18世紀末の作品で、姉妹作のようなものかも。「天地創造」は旧約聖書に題材を採っていますが、「四季」はイギリスの詩人トムソンの叙事詩がもとということで、世俗オラトリオなどといわれているようです。しかしどちらも神に感謝を捧げている点では同じで、教会か世俗かという分け方にはあまり意味を感じません。
 

CDは「四季」が先に納められていて、このボックスでは唯一の初出音源とのこと。他は再リリースです。録音時期もいちばん古い1997年ですが、鮮度の差は感じません。声楽の質の高さも同様で、独唱者だけでいえば、「天地創造」よりも好み。父親の農夫、その娘、その恋人という設定によく合った声質で、牧歌的で美しいアンサンブルです。音楽も練達の技。「春」では自作の「驚愕」交響曲を引用しているのが目立ちます。これについては台本担当とひと悶着あったようですが。「夏」のホルンの信号音や嵐の情景などを聴くと、もしかしたらベートーヴェンの「田園」の参考になった可能性があるかも、と。ハイドンにも学んだベートーヴェンは、交響曲はまだとはいえ、すでに演奏家・作曲家としてウィーンで独り立ちしていました。「秋」には祭りや村人の交流? ハイドンならではの機知に富むユーモラスな表現が聴かれます。冬は厳しい気候を表すような短調で始まり、やがて明るくなって神への感謝が綴られていきます。
 

「天地創造」は3部構成で、4部の「四季」と比べるとややコンパクトかな。第1部が神による創造4日目までで天地、太陽、月、星、夜、昼が誕生。ここでは冒頭からスペクタキュラーな音響が聴かれ、インパクト十分。ティンパニの打ち込みが強烈です。第2部が5日目と6日目で生物と人間が誕生。3人の独唱者は、ここまではガブリエル、ウリエル、ラファエルの3天使です。第3部はアダムとイヴが神に感謝を捧げるシーンで、天使のうち2人が人間役に変更。こちらも充実した音楽です。ちなみに、最後もめでたしめでたしで、「失楽園」の結末は触れられません。
 

演奏は、ほかを知らないので比較できませんが、声楽もオケも素晴らしい。なお、レチタティーヴォではフォルテピアノが使われており、テュッティで盛り上がった後の舌休めとでもいうのか、いい感じの音色変化が楽しめます。録音がいいのもこのボックスに共通で、思えばCDの歴史も40年? 技術の進歩・洗練と量産・予算削減による陳腐化・劣化が常にせめぎあうデジタル録音技術もようやく熟成されたのかな、と思わせます。

posted by みっち | 17:55 | CD・DVD | comments(0) | - |
ハイティンク・ポートレート(その2:ブルックナー)

・ブルックナー:交響曲第5番 変ロ長調(1878年ノヴァーク版)
・ブルックナー:交響曲第6番 イ長調(1881年ハース版)


ベルナルト・ハイティンク指揮、バイエルン放送交響楽団
 

録音:2010年2月12日(第5番)、2017年5月4,5日(第6番)
BR KLASSIK 900174-02,03

 

ハイティンクがBRSOを振ったライヴ集から、今回はブルックナーの2曲。ハイティンクのブルックナーは、引退直前のザルツブルク音楽祭でウィーン・フィルとの7番の映像を見ましたが、あれも立派でした。
 

5番はスケールが大きい。テンポが遅いというわけでは決してなく、意外に速い足取りの箇所もあるのですが、音楽の運びが見事です。オケの響きがまた素晴らしい。金管の強奏に弦が負けておらず、ティンパニの打ち込みも効いて、眼前に大伽藍が建っているような気になります。豪壮な響きだけでなく、静かなところでも低弦のピッツィカートなど細かい神経が行き渡って単調になりません。これは参った。5番はブルックナーの交響曲中でもとくにみっちのお気に入りで、これまでの刷り込みはケンペ/ミュンヘン・フィル。これ以上はないと思っていたのですが、ハイティンクがやってくれました。
 

6番は、5番の7年後の録音ですが、時間の経過は感じさせません。こちらもほとんどいうことない。テンポ的には中庸というべきか。第2楽章の第3主題、葬送風のテーマでもそれほどテンポが落ちないのは支持したい。サヴァリッシュのようにここを思い切り遅くするのはもたれてしまう。6番では、シュタイン/ウィーン・フィルの美演がみっちのお気に入りなのですが、艶っぽいWPOと比べるとBRSOは質実剛健で、また違う魅力があります。これはどっちかに絞りきれないな。
 

録音も極上ですが、再生装置によっては聴こえ方がけっこう変わるようです。家にあるメインとサブで聴き比べたところ、サブのフルレンジスピーカーでは金管が強調され、野放図になる寸前ぐらいの豪快さが印象的。一方、3wayのメインでは解像度が上がり、他のパートの支えがよくわかるために、広々とした空間に音がぎっしり詰まった重厚なサウンドとして聴こえてきます。ブルックナーは、こうでなくてはf^^;。
 

ブルックナーがこれだけ素晴らしいと、マーラーも期待したくなります。でも考えてみると、ブルックナーとマーラーの両方で名声を獲得した指揮者はあまりいないのではなかろうか。クレンペラーやジュリーニあたりが両方振っていますが、演奏する曲は限られていて、全集を作ろうという意志はなかったようですし。

posted by みっち | 15:52 | CD・DVD | comments(0) | - |
マリス・ヤンソンス:ポートレート〜75歳記念BOX

先日のヤンソンスの訃報を聞いてびっくり。76歳だったと聞いてさらにびっくり。みっちの中ではヤンソンスはかなりの若手だったんですが……。どちらかというと、お父さんのアルヴィドの方が名前に耳なじみがあったくらいで。

 

マリスのCDで手持ちはというと、オスロ・フィルを指揮したショスタコーヴィチの6番・9番。あとは「シャンドス30周年記念ボックス」に入っていたチャイコの5番だけ。ショスタコの印象は、ふつうf^^;。コンドラシンで覚えている曲だけに、ほかは全部ふつうかもしれませんが(爆)。チャイコは、インテンポのキビキビ感が特徴的でした。これもケンペやロジェヴェンのすごい演奏と比較してしまうために分が悪い。しかし、その後のマリスがバイエルン放送響とロイヤル・コンセルトヘボウ管を掛け持ちしたりしていることを思えば、実力は確かなはずで、みっちのチョイスがイマイチだっただけでは? と気になりました。


そんなわけで、最近のヤンソンスを知るにいいCDはないかと探して見つけたのがこれでした。バイエルン放送響とのライヴ集成5枚組。最新に近い録音が5,000円前後で買えます。しかも、ハイドンとR・シュトラウスは全然といっていいくらい持っていないみっちのコレクションと演奏曲目のダブりが少ない。コンセルトヘボウも聴いてみたいけど、BRSOも好きなオケです。以下、5枚分を一気に紹介。


[CD1]
・ハイドン:ミサ曲第14番変ロ長調「ハルモニー・ミサ」 Hob.XXII:14
・ハイドン:交響曲第88番ト長調 Hob.I:88より第3楽章

 

ソプラノ:マリン・ハルテリウス、ミカエラ・クナプ(クレド)
アルト:ユディト・シュミット
テノール:クリスティアン・エルスナー、ベルンハルト・シュナイダー(クレド)
バス:フランツ=ヨゼフ・ゼーリヒ
合唱:バイエルン放送合唱団

録音:2008年10月7日(ヴァルトザッセン大聖堂でのライヴ)


録音場所が教会ということで、奥行きのあるホールトーンですが、細かいところも明瞭で混濁は感じられません。いい録音ですねえ。合唱も左からソプラノ、テノール、アルト、バスが定位しており、柔らかいハーモニーが素敵。キリエは変ロ長調で、ソロの歌い交わしがちょっとベートーヴェンのミサ・ソレニムスを思わせるところがあります。クレドだけソロの一部が交代するのは、楽譜の指定? 聴くだけではあまり変化が感じられませんでした。
 

オケはモダン楽器ながら古楽器風な軽快な運び。インテンポでサクサク進んでいきますが、ときおりフィーチャーされる木管の温かい音色はやっぱりBRSO。ヤンソンスの指揮は主旋律主導型ではなく、各声部を対等に聴かせるバランスに特徴があるようです。交響曲のメヌエットになると、ダイナミクスや音色の幅が大きくなってさらに立体的。

 

[CD2]
・ベートーヴェン:交響曲第4番変ロ長調 作品60
・ブラームス:交響曲第4番ホ短調 作品98


録音:2012年11月26日(東京・サントリーホールでのライヴ)、2012年2月6-10日(ミュンヘン・ヘルクレスザールでのラーヴ)
 

ベト4は東京公演の記録です。ヴァイオリンは対向配置で、ところどころで掛け合いがわかります。ヤンソンスはベートーヴェンでもインテンポでサクサク。引っ張ったりタメたりがないのと、主旋律を奏しているパートをとくにフィーチャーしないため、筋肉質でオケの機能的な側面が強く印象づけられます。でも、この曲だともうちょっとチャーミングな表情がほしい。例えば1stヴァイオリンがやや弱く聞こえたり(非力という意味ではなくバランス的に小さい)のと、終楽章のファゴットソロも見事に吹いているのですが十分に聴こえてこない感じがするのが惜しい。


ブラームスでも基本的にヤンソンスのアプローチは変わらないのですが、こちらは成功していて、この曲の初演当時から「凝りすぎ」といわれたオーケストレーションが、ヤンソンスの見事なバランス取りによって透明感すら感じさせる響きを得られています。淡麗なブラームスというべきか。第2楽章のチェロの第2主題など夢のように美しく、そこにファゴットの対旋律を浮き立たせたりする技は鳥肌モノ! 終楽章では、各変奏のバス声部の音色や強弱にまで神経が行き届いていて圧倒されます。テンポが緩む中間部分でのフルートソロの寂しげな表情も素晴らしい。その後のクラリネットとオーボエの暖かい音色がまたいい! 冒頭の主題が戻ってくると、ヴァイオリンの下行音型には珍しく大きなアゴーギクでドラマチックな効果を挙げます。ヤンソンスとBRSOの充実ぶりがうかがえます。

 

[CD3]
・リヒャルト・シュトラウス:アルプス交響曲 作品64
・リヒャルト・シュトラウス:4つの最後の歌


ソプラノ独唱:アニヤ・ハルテロス

録音:2016年10月13-15日、2009年3月25-27日(いずれもミュンヘン・ガスタイクフィルハーモニーでのライヴ)
 

R・シュトラウス作品は基本的に聴くのも弾くのも嫌い。音響的には魅力的と思う箇所もあるのですが、それだけなら映画音楽とかでも同じようなものです。弾くと異様に難しいし。なので、アルプス交響曲もこれが初めてのCD。そんなみっちは演奏をどうこう言える立場にありません。山頂から嵐になって駆け足で下山する後半はまだ聴けました。前半もこのくらい短ければいいのに(爆)。ヤンソンスの指揮は即物的で、ロマンチックなところはあまりありません。オケは素晴らしかったんじゃないでしょうか。


4つの最後の歌は、シュトラウス作品の中ではわりと好き。北九響で演奏したこともあるし。最晩年の作品といっても音響はゴージャスで全然枯れていないのですが、オケは一応伴奏ということでうるさくならないところがいい。ソプラノ独唱は、ところどころ元気がよすぎるかも。あ、でも枯れていないのだからこれでいいのかな。オケが厚いためにがんばらざるを得ないところはありますが、それでも弱音を大切にしてしみじみ歌うべきみたいな先入観があるんですよね。

 

[CD4]
・マーラー:交響曲第9番ニ長調


録音:2016年10月17-21日(ミュンヘン・ガスタイクフィルハーモニーでのライヴ)
 

収録CDの中でもっとも新しい録音で、ヤンソンスの録音としてもほぼ最後に近いものではないかと。BRSOのマーラーといえば、クーベリックの印象が強いのですが。ヤンソンスは独自の重層的なマーラーを聴かせてくれます。これまでも触れてきたヤンソンスならではのバランス取りが、マーラーのオーケストレーションを見事に汲み上げています。第1楽章では、ハープの響きが他のパートに埋もれずにくっきり聴こえてきます。恣意的なアゴーギクは感じられず、機能的な面を打ち出しているのはこれまでと変わりませんが、呼吸の深さがあります。第2楽章のテンポ構成がちょっと眠気を催させるところがあり、クーベリックはこういうところが無造作なようでうまかった。それ以外は求心力とスケールの大きさを兼ね備えていて感銘を受けました。
 

オケはとても優秀。クーベリック盤と比べても完璧ではないかと思えます。ただ、弦は対向配置ではないように聴こえました。冒頭の2ndヴァイオリンは右側というよりも、真中付近に定位しています。

 

[CD5]
・ヴァレーズ:アメリカ(1922年版)
・ストラヴィンスキー:詩篇交響曲
・ショスタコーヴィチ:交響曲第6番ロ短調 作品54


合唱:バイエルン放送合唱団
録音:2015年10月13-16日、2009年3月5-6日、2013年3月18-21日(いずれもミュンヘン・ガスタイクフィルハーモニーでのライヴ)

 

ラスト1枚は、20世紀の音楽集。ヴァレーズはいわゆるゲンダイオンガクで、打楽器のユーモラスな響きとドカンドカンという大音響が代わる代わる出てくるような作品ですが、どういう必然性でこうなっているのかチンプンカンプン。最後はもう、うるさいうるさい(爆)。ただ、ヤンソンスで聴くと、騒音もそこそこ整えられた響きとして鳴っているような気はしました。


ストラヴィンスキーの詩篇交響曲は、カンタータ的作品。3楽章からなっていて、ヴァレーズの後で聴くとずいぶん美しい。ヴァレーズより短いのも◯f^^;。第3楽章は、ちょっと「カルミナ・ブラーナ」を思い起こさせるところがあります。曲をよく知らないため、指揮についてはコメントが難しい。
 

最後はショスタコの6番。オスロ・フィルとの録音もありましたが、マリスはこの曲が好きなのかな? 旧録音と比べると、ずいぶん彫りが深くなった印象があります。これはオケによるところも大きいかも。第1楽章など、どのソロも説得力があって聴かせます。第2楽章の白熱ぶりも素晴らしい。ここぞというところのティンパニがばっちり決まります。第3楽章では、低弦など伴奏系のダイナミクスが精密で生きています。明晰さを保って細かなニュアンスを汲み尽くしながらもクライマックスに向かってひた走る。これはお見事でした。

posted by みっち | 17:17 | CD・DVD | comments(0) | - |
ドホナーニとフェルツ マーラー5番聴き比べ

最近聴いたマーラーの交響曲第5番CDが以下の2枚。


・ドホナーニ/クリーヴランド管弦楽団(1988年)
・フェルツ/シュトゥットガルト・フィルハーモニカー(2009年)

 

ドホナーニ盤は、以前から聞きたいと思っていたもので、友人が所持するCDを借りました。以前、フィルハーモニア管とのブラームスの交響曲第2番と第4番のエントリでも書いたのですが、ドホナーニとクリーヴランド管は1980年代から1990年代にかけてデッカ・レーベルの看板的な存在として多数のCDをリリースしていたものの、現在ほとんど廃盤で入手難です。当時購読していた「レコード芸術」では録音ばっかり褒められていたドホナーニ。年代的にはブロムシュテットと並ぶ存在ですが、日本ではすでに忘れ去られているのでは?

 

さて、マーラーの5番ですが、まず第1楽章冒頭のトランペットの、硬い突き刺すような音色に驚かされます。これはドホナーニの指示? その後は精密なアンサンブルで、分離の良い録音とも相まって、各声部の絡み具合が明瞭に聞き取れます。マーラーの譜面がどのように書かれているか知りたいなら、この演奏を聞くといい。オケもうまいし、対旋律を弾くチェロのそろい方たるや、まさに1本の線。その一方で、デフォルメやスケール感といった演出・ドラマ性は皆無といっていい。タテ線に非常に厳しいハンガリー人の血がそうさせるのでしょうか。分析的なマーラーとしては究極とも思えますが、この解釈でほかの曲も聞きたいかといわれると、うーん、となってしまう。まあ当時はバーンスタインやテンシュテットといった「ドロドロ派」が主流のように扱われていましたから、それへのアンチテーゼ的なアプローチに意味があったのかもしれません。マーラー指揮者としては「透かし派」と見た。他のマーラー指揮者に例えると、ギーレンに近いかも。しかし、ギーレンはときとして音楽への共感がほとばしるのに対し、ドホナーニは終始冷静で、ギーレン以上の「冷血」ぶり(爆)。

 

この印象は、録音によるところも大きいでしょう。総じてデッカの録音は優秀といわれますが、混濁を許さない潔癖症みたいなところがあり、キレは良くともマスとしての押し出しや魅力に欠けます。マーラーの場合、大編成ならではのどっかーん、ぐわしゃーん的な音響も味わいたいわけでf^^;。もしこれがグラモフォンの録音だったら、ブーレーズなみには評判を取れていたのではないでしょうか。
 

一方のフェルツ盤は、録音時期に約20年の開きがあります。みっちのマーラー・コレクションとしては、フェルツで7番、6番、5番と声楽の入っていない中期の3曲がそろいました。とはいえ、「鬼才」という謳い文句だった彼のマーラープロジェクトもいまやそれほど話題になっていない感じ。この人は、ルイージと並ぶ「テンポ極端メリハリ派」。速いところはより速く、遅いところはより遅く。ドホナーニとは好対照といっていい。ルイージとの違いは、ルイージがより感覚的とすればフェルツのテンポ設定には計算されたものが感じられることで、どちらがいいかは一概にいえません。テンポを自在に揺らす点では「印籠派」の巨匠プレートルにも近いかも(爆)。
 

録音時間を比べてみます。
・ドホナーニ:12:09  12:54  15:32  10:19  14:11
・フェルツ:12:47  15:11  17:21  12:29  13:54

 

ドホナーニのテンポはどの楽章も中庸で極端なところはありません。対してフェルツは、第4楽章まですべての楽章が遅く、第5楽章だけ速い。とくに3つの中間楽章の遅さが際立っています。
 

実際の演奏ですが、第1楽章冒頭のトランペットはわりと強めに吹かれ、それだけでなく引き伸ばす音には膨らみを持たせて、華やかささえ感じさせます。CDジャケットも天使のラッパの絵だしねえ。ここでは、フェルツはメンデルスゾーンの「結婚行進曲」のパロディーを意識していると見ました。ちなみに、マーラーとメンデルスゾーンはユダヤ人同士ということもあってか、ほかにも関連を思わせるところがあります。例えば「真夏の夜の夢」序曲に、第6番のモットーリズムや長調→短調の暗転が出てくるのは、マーラーがメンデルスゾーンに親近感を持っていたことの表れではないでしょうか。というわけで、始まりからギスギスのドホナーニとは対極。遅いテンポながら弛緩した感じはなく、よく歌っています。第2楽章をほぼアタッカで続けているのも、この2つの楽章を「第1部」としたマーラーの意図の反映でしょう。第1主題の前打音の扱いについては、フェルツによる解説文が日本語訳でも読めます。主部は、速いところと遅いところでギアを使い分けています。

 

第3楽章では第1主題、第2主題、中間主題と出てくる順にテンポが遅くなっており、こちらは3段ギア。第4楽章アダージェットは、ドホナーニと変わりないくらいのテンポで開始し、主題がチェロに移るところからぐっと遅くなります。ケレン味たっぷりで、ここまでやられるとかえって清々しい(爆)。テンポのことばかり書いていますが、それぐらい異様ということです。オケは立派に付いてきており、ライヴらしい傷もありません。フィナーレでは一転して快速に飛ばします。この楽章ではアダージェットの中間部を都合3回回想しますが、速いテンポでも気品を失わず、消えていくときの繊細さも印象的。この演奏を聴いていて、アダージェット音形が続く第6番の第1楽章第2主題につながっているのだということに気が付きました。どっちも「アルマの主題」なわけか! などといろいろ考えさせてくれる演奏。終了後には大喝采を浴びています。やっぱりフェルツは面白い。
 

録音は、これまたデッカとは対照的な奥行きのあるホールトーン。それでいて細かいところもよく入っています。ヴァイオリンは左右に分かれる対向配置。総奏はズシャーンと混濁を含みますが、残響豊かな演奏会場では当然でしょうし、スケール感が味わえます。なお、フェルツ盤に共通している特徴として出力レベルが小さいことがあり、アンプのボリュームは通常の5割増しをおすすめします。

posted by みっち | 23:05 | CD・DVD | comments(0) | - |
フィッシャー/BBC NOWによるオネゲル:クリスマス・カンタータほか

・オネゲル:交響詩「勝利のオラス」
・オネゲル:チェロ協奏曲 ハ長調
・オネゲル:前奏曲、フーガとポストリュード
・オネゲル:クリスマス・カンタータ


アルバン・ゲルハルト(チェロ独奏)、ジェームズ・ラザフォード(バリトン独唱)
ティエリー・フィッシャー指揮、BBCナショナル・オーケストラ・オヴ・ウェールズ及び同合唱団

 

録音:2007年12月14日(クリスマス・カンタータ)、2008年2月20日〜23日
(Hyperion CDA 67688)

 

クリスマス時期に聴こうと思って買っておいたのがこのCD。オネゲルのクリスマス・カンタータです。傑作という評判の割に録音は多くなく、みっちが信頼するハイペリオン・レーベルに新しめのものがあったのをチョイスしました。曲も指揮者も未聴のため、比較はできません。
 

お目当てのクリスマス・カンタータを含め、全4曲が収録されています。交響詩「勝利のオラス」はオネゲルが出世作「ダヴィデ王」を書いたころの作品で、若さならではの才気走ったところも感じさせます。フランス「6人組」に数えられているオネゲルですが、スイス人ということもあり、フランス的な洒脱さとドイツ的な重厚さを兼ね備えたような魅力があります。CDではこの曲に9つのクレジットが設定されており、各場面ということかな? 1曲としてまとまった構成というよりは、いくつかの変遷をつなげた音楽のようです。
 

チェロ協奏曲は、平明で牧歌的なチェロの旋律で開始されます。お、これいいじゃん、と思っていると、一転して現代的になり、ショスタコ風味なドコドコに。牧歌的な旋律は楽章の最後にまた還ってきます。第2楽章の後にカデンツァが独立しており、これは初演者モーリス・マルシャルによるもの。第3楽章は快活に始まり、中間で遅い民謡調となり、最後は快調に飛ばします。
 

3曲目。「前奏曲、フーガとポストリュード」といった感じのタイトルはフランクのオルガン曲にありますよね。冒頭の輝かしいオケの和音からして印象的。堂々としたフーガも見事なもの。もっと演奏されていい音楽だと思うのですが、最後は静かに終わるので、そこがコンサート向きにアピールしにくいのかも。
 

最後にクリスマス・カンタータです。この曲はオネゲルの死の2年前に書かれており、遺作となりました。クレジットによると曲は2部に分かれており、前半は不安に包まれた求心的な音楽。低音部から次第に音域が広がっていき、中盤では高弦の下行音形と低弦の上行音形が掛け合い、緊張を高めます。さらに音楽は悲劇的に盛り上がり、オケと合唱が祈り、叫ぶような頂点で響く、児童合唱による明るいコラールは、オネゲルの交響曲第2番の終わりに出る高らかなトランペットを思い起こさせます。天使だ!
 

後半は、この児童合唱によるコラールに先導されて、清澄な音楽が展開されます。ここでは賛美歌「エッサイの根より」、「きよしこの夜」が使われていて、感動的。「きよしこの夜」でまさか泣かされるとは思わなかったよ。バリトン独唱は温かい包容力を示す歌唱。3拍子になって高揚し、オケが輝かしい頂点を築くのですが、最後にまた静まり、賛美歌の断片を繰り返しながら冒頭の和音に戻っていきます。簡潔だけど、深く心に残る音楽。これからは毎年この曲を聴くことにしよう。
 

ティエリー・フィッシャーは、1957年スイス生まれでフルート奏者出身とのこと。オケ・合唱ともどもオネゲルに共感を持って演奏していることがよくわかります。「パシフィック231」以外なかなか演奏されないオネゲルですが、このCDはそんなオネゲルの管弦楽曲の魅力をよく示しています。ハイペリオンらしいクリアな録音も素晴らしい。

posted by みっち | 12:57 | CD・DVD | comments(0) | - |
クーベリック/ベルリン・フィルによるドヴォルザーク交響曲全集(その5)

・ドヴォルザーク:交響曲第5番ヘ長調 作品76


ラファエル・クーベリック指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1972年10月
(クーベリック グラモフォン録音全集ボックスより)


クーベリックのグラモフォン録音全集から、ドヴォルザークの交響曲全集を聴いています。今回は第5番。ボックスの11枚目で、第3番とのカップリング。


作曲は1875年。第4番の翌年です。この曲は1879年初演、1888年出版と、ドヴォルザークの初期交響曲としては比較的順調に世に出た方ですが、6番と7番が先に出版されていたため、当初は「第3番」とされていたそうです。
 

第1楽章、序奏なしで始まるクラリネットの牧歌的な主題は、これまでのワーグナー風な曲調からの脱皮を宣言しているかのよう。この旋律はフルートに引き継がれ、ドヴォルザークが得意とする木管楽器の扱いを味わうことができます。その後の、アクセントの効いた沸き立つような全合奏もいい。ヴァイオリンの第2主題は半音階的でワーグナー調ともいえますが、リズムと進行はシューマンの第1番「春」、フィナーレのコーダで繰り返される動機とよく似ています。もしかしたら、このころドヴォルザークはシューマンを研究したのではないでしょうか。クーベリックはこの楽章の提示部を繰り返していますが、これまでなかったと思うので、ということは、楽譜に繰り返し記号があるのはこの5番が初めてということ?
 

第2楽章は変奏曲風で、主部は人懐こさを感じさせるチェロの旋律。ボヘミア風といっていいのかな。中間部も主部と同じ素材の変奏によっているようです。この楽章からアタッカのようにしてほとんど休みなく第3楽章につながっているのが独特ですが、これもシューマンの「春」を参考にしたのかも。第3楽章は快活なスケルツォ。この二つの中間楽章は、メロディーがくっきりしたと同時にずいぶん簡潔になりました。
 

第4楽章は短調で開始され、その後長調となります。この短調→長調というシークエンスをひとまとまりとして、変奏しながら繰り返していくという形式。管弦楽の扱いは見事で、聴いていて楽しい。メロディーメーカーとしての創意もあるし、この曲に至って、ドヴォルザークはついにオリジナルの交響曲様式をつかんだのではないでしょうか。おめでとう、アントニンくん! 正直、第4番まではなかったことにしてもいいんじゃないかと(爆)。魅力的な出来からして、もっとポピュラーになってもいい曲だと思います。
 

演奏は、いつものベルリン・フィル品質。立派の一言です。ただ、もしかするとガッチリ鳴らし過ぎかも。この曲は、もっと素朴にいくスタイルも似つかわしそうなんですよね。ほかを聴いたことがないので、推測でしかありませんが。

posted by みっち | 22:20 | CD・DVD | comments(0) | trackbacks(0) |
クーベリック/ベルリン・フィルによるドヴォルザーク交響曲全集(その4)

・ドヴォルザーク:交響曲第4番ニ短調 作品13


ラファエル・クーベリック指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 

録音:1972年10月
(クーベリック グラモフォン録音全集ボックスより)

 

クーベリックのグラモフォン録音全集から、ドヴォルザークの交響曲全集を聴いています。今回は第4番。ボックスの12枚目で、第7番とのカップリング。


実はこのドヴォルザーク交響曲全集、北九響定期演奏会で8番を演奏するので、本番前には8番まで聴くつもりでいたのですが、本番終わってもいまだ4番というていたらくです(ーー;)。というのも、ボックスの8枚目にあるベルクとマルティノンのヴァイオリン協奏曲を先にエントリしておこうと考えたのが失敗でした。とくにベルクは名曲とされているんですが、みっちは12音技法になじみがなく、さっぱりわからん。それでもなにか書こうとして繰り返し聴き、結局あきらめたという顛末がありまして、ドヴォルザークにかかる以前で手間取った次第。
 

閑話休題。第4番は1874年、第3番の翌年に書かれています。第4番の完成後に第3番が初演され、ドヴォルザークはようやく交響曲を世に出すことができたものの、第4番は第3楽章のみ初演されたにとどまり、全曲初演は1892年。出版はさらに遅れて1912年。というわけで、この曲も番号が与えられたのはずっと後で、それまではいまの第8番が「第4番」となっていました。ちなみに、ブルックナーの交響曲第4番がドヴォルザークと同じ年に発表されており、第3番もその前年ということで、ここにきて、ともにワーグナーの影響が大きい二人のペースが一致してきていることは興味深い。とはいえ、ドヴォルザークがブルックナーを聴いたかどうかはわかりません。


第1楽章はニ短調ですが、長調への傾斜が強く、悲壮感はそれほどありません。第2主題の和声はワーグナーっぽい。両者の対比は明瞭で、ドヴォルザークが書法をだんだんものにしてきている感じがします。展開部ではこの二つの主題を使っており、前半はなかなかですが、後半の再現部への移行は平凡でぬるい。再現部では第1主題のあとの推移が長くなっていますが、不自然でよけいな感じ。ちょっとまだ冗長さが残っています。


第2楽章は半音階で下がっていく旋律がいかにもワーグナー的。これは『タンホイザー』の世界ですね。しかし、この主題が金管合奏からヴァイオリン、そしてチェロへと受け継がれていく推移は美しい。中盤のオーボエも印象深い。緩徐楽章もいい雰囲気になってきていますが、最後に引っ張りすぎるあたりがまだ洗練が足りない。
 

第3楽章はアレグロ・フェローチェのスケルツォで、スケルツォらしいスケルツォ楽章は、これが初めてではないでしょうか。楽章の終わり近くにトリオ主題が短く再現するあたりは、「新世界」交響曲を先取りしています。ただ、そこそこ規模が大きいわりに主部も中間部も同じようなテンションで盛り上げるので、主部が再現してからは退屈します。
 

フィナーレは、ABABAB+コーダでいいのかな? リズミカルで活発な第1主題と涼し気な第2主題の対比がはっきりしており、わかりやすい。全体に3番よりも目立つ旋律が増え、さらにまとまりがよくなってきましたが、あともう半歩という感じか。

posted by みっち | 15:35 | CD・DVD | comments(0) | trackbacks(0) |
クーベリック/ベルリン・フィルによるドヴォルザーク交響曲全集(その3)

・ドヴォルザーク:交響曲第3番変ホ長調 作品10


ラファエル・クーベリック指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1972年10月
(クーベリック グラモフォン録音全集ボックスより)


クーベリックのグラモフォン録音全集から、ドヴォルザークの交響曲全集を聴いています。今回は第3番。ボックスの11枚目として、第5番とのカップリング。


作曲は1873年ということですから、第2番から8年経ちました。第3番はドヴォルザークの交響曲として初めて初演された作品ですが、出版は遅れて1912年とのこと。はじめは番号なしだったらしい。ワーグナーの影響からは抜けていませんが、構成的には大作主義から脱したようです。1番も2番も日の目を見なかったドヴォルザークとしては、このままではいかんと思ったことは確かでしょう。しかもこの曲は3楽章構成で、これはドヴォルザークの交響曲としても珍しい、というかこの第3番だけ。その分?第2楽章が長く、結局演奏時間は40分近い。それでも前2作よりはかなりコンパクトになりました。
 

音楽的にも変化が見られます。第1楽章は冒頭、弦と木管の第1主題が舞曲調かつ特徴的で、この曲でようやく口ずさめるような旋律が現れました。ただし、このメロディーは、ワーグナーの「リエンツィ序曲」を思わせますが。第2主題との対比もくっきりしており、わかりやすい。展開部やコーダでの扱いはまだまだ感がありますが、全体的にはまとまってきました。
 

第2楽章の主部は以前に逆戻り? 主旋律がはっきりしない情景的な進行が続きます。しかし中間部に入ると長調で緩やかな行進曲となり、ワーグナーの『タンホイザー』や『ローエングリン』を彷彿とさせます。主部が短く戻り、最後にもう一度行進曲になるのですが、主部のできがあまり良くないので、行進曲の中で長調のまま回帰させ、コーダに結びつければすっきりしたのでは? などと、アントニンくんに教えてやりたくなったり(爆)。
 

第3楽章は、ほぼひとつの素材で全体を作っている感じがあります。8分と短いし、求心的な結びになっているのですが、コーダがちょっと変じゃないですか? 転調がおかしなところへ行ってしまい、元の調に戻ってきた感じがしないまま終わってしまう。
 

というわけで、個人的にはようやく鑑賞に耐える作品になりかかってきた印象。もう一息でしょう。ベルリン・フィルの演奏は、変わらず立派なものです。

posted by みっち | 14:29 | CD・DVD | comments(0) | trackbacks(0) |
クーベリック/ベルリン・フィルによるドヴォルザーク交響曲全集(その2)

・ドヴォルザーク:交響曲第2番変ロ長調 作品4


ラファエル・クーベリック指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1972年12月

(クーベリック グラモフォン録音全集ボックスより)

 

クーベリックのグラモフォン録音全集から、ドヴォルザークの交響曲全集を聴いています。今回は第2番。オケはベルリン・フィル。ボックスの10枚目として、第1番と2枚組の体裁になっています。
 

第2番は1865年、第1番のすぐ後に書かれています。初演はそれから20年以上経った1888年。出版はさらに遅れて、作曲者の死後の1959年。それまでは、現在の第7番が「第2番」とされていました。
 

ハ短調の第1番に対し、第2番は変ロ長調で、明るい曲調になっています。とはいえ、規模拡大傾向は変わっておらず、演奏時間は第1番を上回る約54分。これはドヴォルザークの交響曲中では最大スケールで、いちばん短い第4楽章でも11分半かかっています。第1番でアイデアをいろいろ盛り込んだはずですが、まだまだ足りなかった? それともむしろ勢いがついた? しかし、長さに見合う内容があるかというと、首を傾げざるを得ません。
 

第1楽章は牧歌的な雰囲気で始まりますが、その後の推移はとりとめがなく、形式感も希薄です。第2楽章も同様。中ほどでフガートになる変化はありますが、締まりがなく、聴いていて集中力が続かない。後年の特徴である口ずさめるようなメロディーは、このころの作品には全然見られず、ずいぶんギャップがあります。第3楽章はスケルツォと銘打たれているわりには穏やかな進行で、舞曲調ではありません。ここはちょっと異色さが出ています。フィナーレは、比較的引き締まっていて、とくにコーダでの終結に向けた力技はなかなか聴かせます。というわけで、後半は少し面白みがありますが、前半はダレる。構えの大きさや旋律の個性の薄さはブルックナーの初期作品を連想させます。
 

なお、この間ブルックナー的などといっていますが、調べたところ、ブルックナーの交響曲第1番は1866年で、ドヴォルザークの第1番、第2番の方がそれより早い。ブルックナーの「00番」とも呼ばれるヘ短調の習作は1863年ですが、これをドヴォルザークが聴いたとも思えず、どっちの影響というよりも、二人ともワーグナーの影響下にあって、交響曲を書こうとしたら似た感じになったというのが正解? 当時はこの二人といわず、ワーグナーにかぶれて同傾向の音楽が流行っていたのかもしれません。ドヴォルザークは後にブラームスに接近するわけですが、もしこの両者の出会いがなかったらどうなっていたか。あるいは、ブルックナーの向こうを張るような大規模な交響曲を残したかもしれません。このあたり、歴史のifとして想像すると興味深い。


演奏は、いつもの立派なベルリン・フィルです。オケがすごいのかドヴォルザークのオーケストレーションがいいのか、前者はまず間違いないでしょう。よく鳴っています。

posted by みっち | 21:03 | CD・DVD | comments(0) | trackbacks(0) |
クーベリック/ベルリン・フィルによるドヴォルザーク交響曲全集(その1)

・ドヴォルザーク:交響曲第1番ハ短調 作品3「ズロニツェの鐘」


ラファエル・クーベリック指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 

録音:1972年12月〜1973年2月
クーベリック グラモフォン録音全集ボックスより

 

クーベリックのグラモフォン録音全集から、ドヴォルザークの交響曲全集を聴いていくことにします。オケはベルリン・フィル。ボックスの9枚目に収録されています。
 

ドヴォルザークの交響曲は7番以降しか聴いたことがありません。かつては「新世界」交響曲が第5番と呼ばれていた時代があり、9曲中初期の4曲は近年蘇演されたものらしい。ウィキペディアによると、この第1番の発見は1923年だったそうですが、出版は1961年にずれ込んでいます。まだそれほど録音されていないのかもしれません。
 

全曲の演奏時間は約48分で、なかなかの長さ。第1楽章冒頭に出る金管のモチーフが「ズロニツェの鐘」? その後すぐに主部に入るようで、第1主題の推移が長大です。でもまあ、ここはけっこうかっこいい。ハ短調ならではの緊張感があります。第2主題との対比も聴かせます。しかし、その後の展開部から再現部にかけてがよくわかりません。全体を通じて同じテンポ感でずんずん進み、区分が曖昧。和声的には、ワーグナーの『オランダ人』あたりが近い印象。
 

第2楽章はますます形式感がつかみづらい。山や谷があまり感じられず、メロディー不在で和声進行がメインという手法はブルックナーを思わせます。
 

第3楽章はスケルツォではなく、2拍子のアレグレット。全曲でいちばん短い楽章ですが、9分半。いろいろやりたいのかもしれないけど、ちょっととりとめがない。
 

フィナーレも曲想はそれなりに変わっていきますが、対比が明確でなく、形式感がつかみづらい。ずっと同じ調子な感じがします。構えは大きいのですが、構成やつなぎ方が不十分で、デュナーミクや音色の対比といった表現もまだまだという感じ。この曲を聴く限り、ブラームス的な要素は全然といっていいくらい感じず、後年のメロディーメーカーぶりも発揮されてはいません。やっぱりブルックナーを思わせるなあ。
 

ベルリン・フィルの演奏は立派の一言。これ以上立派にはできないのではないかというくらい。でも、あるいは鳴らし過ぎかもね。メリハリのメリの方をもっと強調したら果たしてどうだったか。それだと、やっぱりいまの方がよかったと思うのかもしれないけどf^^;。

posted by みっち | 22:32 | CD・DVD | comments(0) | trackbacks(0) |