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お気楽妄想系のページf^^; 荒らし投稿がつづくのでコメントは承認制としました。
大貫妙子&小松亮太『Tint』

1. 1980年代
2. Tango 
3. Hiver
4. エトランゼ〜etranger
5. 我々はあまりに若かった
6. 愛しきあなたへ
7. ハカランダの花の下で
8. リベルタンゴ
9. ホテル
10. 突然の贈り物


大貫妙子&小松亮太
Sony Music Labels SICL 275

 

久しぶりの大貫妙子。クラシック音楽以外のCDはあまり持っていませんが、彼女は数少ない例外的存在です。といっても今回の購入は、『Tint』というタイトルが理由でした。みっちがピアノ四重奏に挑戦したことは別にエントリしましたが、今後も活動継続が決まりました(パチパチ)。それならユニット名を考えなきゃということで、4人の頭文字を並べて出来上がったのが、TINT。彩りとか濃淡とかいう意味で、なかなかいいぞ。こうしてピアノカルテット・TINT爆誕(爆)。そして同じタイトルのCD発見、という次第ですf^^;。


『Tint』は2015年のアルバムで、いまのところ、大貫妙子のオリジナルアルバムとしては最新のものらしい。小松亮太とのコラボレーション作品で、インストゥルメンタルナンバーが3曲あるので、大貫は全曲ではありませんが、小松のバンドネオンは全曲に参加しています。


「Tango」は坂本龍一作曲によるリメイク、「Hiver」もリメイク、「突然の贈り物」はコンサートでの定番曲など、オリジナルの新曲は少なく、「愛しきあなたへ」と「ホテル」くらい? おなじみ「リベルタンゴ」(これはインストゥルメンタル)もあります。でも、それは問題ではなく、むしろ知っているあの曲が新鮮なアレンジで聴ける楽しみがあります。とはいえ、新曲の「愛しきあなたへ」はとても美しい。


編成は一番大きいものでも10人ほどで、おそらくはセッション録音でしょう。いま眼の前で生じているようなライヴ感。とりわけ小松のバンドネオンは光線のように輝いており、アコースティックな響きに彩りと燦きを与えています。録音もそれをよく捉えて素晴らしい。大貫のボーカルのみは定位感があまりなく音場が広がっていますが、ピタッとさせると細身になってしまうのを避けて、あえてそうしてるのかな? 彼女の歌唱もバンドネオンに触発されているのか、柔らかさと素っ気なさが適度に絡まり、得も言われぬ風情を醸しています。近ごろは音楽CDの加工品・消耗品化が激しいですが、内容の充実と質の高さで勝負しているものもある、ということを知らしめる1枚。

posted by みっち | 23:02 | CD・DVD | comments(0) | - |
クレンペラーとヴィト:ドイツ・レクイエムの聴き比べ

・オットー・クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団、フィルハーモニア合唱団。ソプラノ独唱:エリーザベト・シュヴァルツコップ、バリトン独唱:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ。1961年録音 Warner Classics 4 04338 2


・アントニ・ヴィト指揮、ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団。ワルシャワ・フィルハーモニー合唱団。ソプラノ独唱:クリスティアーネ・リボル、バリトン独唱:トーマス・E・バウアー。2012年録音 NAXOS 8.573061

 

元旦から連日の災害・事故で、おめでたがっている場合なのか悩むほどですが、2024年もよろしくお願い申し上げます。
 

歳の初めになにを聴こうか、これも考えました。音楽を聴いたからって、戦争が止まるわけでも災害が消えるわけでもありませんが、家でできるせめてもの行為ということで。そうして決めたのがブラームスのドイツ・レクイエムです。
 

ドイツ・レクイエムは、ブラームスの最大と言える作品で、もちろん代表作なのですが、交響曲と比べて聴く機会は少い。オケに合唱・独唱付きという編成上の理由もありますが、ベートーヴェンの「第九」のような例もあるから、それだけではない。おそらく規模の割に演奏効果が地味なことと、若書きということがありそう。ブラームスの場合、若いからといって未熟な作品というわけでは決してないんですけどね。
 

ヴィト盤はもともと持っており、クレンペラー盤は昨年購入したクレンペラーのブラームス・ボックス(EMI音源)に収録されているものです。まず収録時間ですが、クレンペラーが69:07、ヴィトが75:15。なんとヴィトが6分も長い。各曲の比較でも、すべてヴィトがクレンペラーより長いという結果です。総じてのテンポ感覚としては、速いところは両者同じくらいだが、基本的なテンポでヴィトが遅い。ちなみに、実はもう1枚、レクイエムを10枚集めた激安ボックスにこの曲が入っていて、その演奏時間は65分ほどで、ヴィト盤と10分違うという。ちなみにこちらは無名楽団のライヴで、水準的に同列とは言い難い(これだけ聴けば一応鑑賞には耐えるけど)ので、今回は比較に取り上げません。結局、一日で同じ曲を違う演奏で3回聴きましたf^^;。


クレンペラー盤のテンポは「適正」と感じるもので、この人ベト7とかマラ7とか、ずっこける(死語)くらいにおそおそな演奏もあるだけに、ブラームスではなぜそれをやらないのかが逆に謎f^^;。オケは、この時期のフィルハーモニア管に特徴的なオーボエの懐かしさのある音色が聴けます。あと例えば第2曲でクレッシェンドしていくときの金管の不穏な響きなど、要所でイングリッシュ・ブラスの片鱗を覗かせているのが頼もしい。独唱はビッグネームをそろえています。とくにフィッシャー=ディースカウは最盛期なのか、声の張りも素晴らしく凛々しい。シュワルツコップは細かいヴィブラートが時代を感じさせますが、上品ともいえる。コーラスも立派です。録音は、ヴィト盤と50年以上の差がありますが、鮮度は高く定位はむしろ優れているほど。第1曲の強音がやや歪っぽいのが年代を感じさせますが、2曲目以降は問題ありません。なお、ワーナーから出ているEMI音源の再発ものは、リマスタリング良好なものが多く、お手元の音盤がARTや国内盤HS2088などの場合、買い直す価値があります。
 

ヴィト盤については、7年前にエントリしたときと印象は変わらないのですが、クレンペラー盤との比較でいえば、柔和で静謐ともいえる演奏です。出だしや終曲などの和声の繊細な移り変わり、木管の美しい和音などアンサンブルの精度が高いのは、ポーランド指揮者の伝統かと。コーラスと弦楽はいい勝負か。バリトン独唱のバウアーは、フィッシャー=ディースカウほどの無双ぶりではないにしても、真摯で立派な歌唱だし、ソプラノ独唱のリボルは表現力ではシュワルツコップを上回っています。録音も昔のナクソスの銭湯のようなわんわん残響ではなく自然なプレゼンスです。


というわけで、総合的には、美しく傷の少ないヴィト盤を推します。テンポ的にゆったりしているので、どちらかというと浸りたい人向け。もっと構築性を求める人はクレンペラーでしょう。

posted by みっち | 21:46 | CD・DVD | comments(0) | - |
アンゲリッシュのゴルトベルク変奏曲

・バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV 988
 

ピアノ:ニコラ・アンゲリッシュ
2011年録音、ERATO 50999 0706642 9

 

ニコラ・アンゲリッシュのバッハです。2011年、アンゲリッシュ40歳のときの録音。正直、バッハはピアノじゃなくてチェンバロだろ?とか思っていました。これを聴くまでは。ピアノでも素晴らしいぞf^^;。いやまあ、チェンバロ演奏にしても昔レコードで買ったことがあるだけで、いずれにしろ初心者同然ですが。


演奏は約80分と、CDの収録時間をほぼいっぱいに使っています。冒頭のテーマはゆったりと優しい子守歌のようで、これはもう間違いない。なにがというと、読書とかのBGMとして完璧です。ながら聴きに最適(ほめている)。この曲にそれ以上のなにを求めるというのか。というわけで、いまもこの曲を流しながら書いています。
 

もちろん、まろやかなピアノの音色、第1変奏の一転して目の覚めるような快活なリズムや第16変奏の後半の始まりという気分転換、第29変奏、第30変奏の高揚と見事なフーガなどなど、部分的に取り上げてすごいと言うこともできますが、手持ちで比較対象がなく違いを示すことができないし、結局のところ演奏が素晴らしいというのと曲とバッハが素晴らしいというのとが同義になってしまう気がします。
 

アンゲリッシュのCDは、あと2019年録音のプロコフィエフ集があり、おそらく最後の録音かと。それ以外には、リスト「巡礼の年」の再リリース、珍しくピリオド楽器を弾いたベートーヴェンのピアノ協奏曲4番・5番、この秋に出た「オマージュ」と題された未発表録音ボックスがあります。プロコ以外は注文済みで、年末年始はアンゲリッシュ三昧の予定だったのですが、「巡礼の年」の再発時期がずれ込んでいまだに入手できておらず、今年はこのゴルトベルク変奏曲で締めくくりとなります。年越しにもふさわしい。それでは、みなさん良いお年を!

posted by みっち | 16:37 | CD・DVD | comments(0) | - |
アンゲリッシュの「献呈」

・リスト:ピアノソナタロ短調 S.178
・シューマン:クライスレリアーナ 作品16
・ショパン:練習曲集 作品10より第10曲変イ長調、第12曲ハ短調

 

ピアノ:ニコラ・アンゲリッシュ
2016年録音、ERATO 0190295990671

 

2022年4月に51歳で亡くなったピアニスト、ニコラ・アンゲリッシュによるロマン派アルバム。アンゲリッシュは現役ピアニストの中で例外的に追っかけて聴きたいと思っていた人で、カピュソン兄弟たちとのフォーレの室内楽で知り、ブラームスの協奏曲や室内楽などを収録したボックスも最高でしたから、訃報はとてもショックでした。その後まもなくこのCDとバッハのゴルトベルク変奏曲のCDを入手していたのですが、それぞれ一度は聴いたものの、みっちはそもそもピアノ曲をろくに知らない! 語れない! ほかに積ん読状態のCDボックスがいくつもあって、それも消化しなきゃというわけで、この年末に至り、ようやくじっくり聴こうかという状況になった次第。実を言うとまだニールセン・ボックスやカール・リヒターボックスが未消化だけど、あきらめムードが漂っておりますf^^;。


録音は2016年、アンゲリッシュは40代半ばということになります。「献呈 "Dedication"」というタイトルは、リストがシューマンにピアノソナタを、シューマンがショパンにクライスレリアーナを、ショパンがリストにエチュード10番・12番をそれぞれ献呈ということで、献呈で作られた3人の環によるアルバム収録というシャレた趣向になっています。ついでにいえば、リストのシューマンへの献呈は、先にシューマンが幻想曲をリストに贈ったその返礼という意味もあったようで、この二人はなにかと交流があるんですよね。一方で、シューマンはショパンを「諸君、脱帽せよ!」などと紹介したので有名ですが、ショパンの方はシューマンに対して関心がなかったらしい。だから逆回りの環はできなかったのかも。
 

リストのピアノソナタを聴いていて思うのは、アンゲリッシュという人は決してガチャ弾きしないということです。作品をよくわかってなくて言うのですが、こういう曲はガーン、ドッキャーン(爆)みたいにピアノをぶっ叩くようなド派手な演奏がハマるものではないかと思うところを、やらない。もちろん音階や跳躍などスリリングで悪魔的、恐ろしいほど指が回ってかつ粒ぞろいな凄みは感じさせるものの、むしろ静かで思索的な箇所でなにごとかを求めているような印象の方が強い。シューマンの妻クララはリストを「ピアノの破壊者」と呼んで嫌っていたようですが、アンゲリッシュの演奏で聴けばその印象も変わったかもしれないと思うほど。シューマン自身については、この曲が献呈されたのがシューマンがライン川に投身自殺を図った後らしく、おそらくこの曲の譜面を見ることも聴くこともなかったろうことが残念です。
 

クライスレリアーナは、シューマンの代表的なピアノ作品のひとつとされていますが、個人的には少々とっつきが良くない。なぜなら、各曲にタイトルがないからf^^;。E.T.A.ホフマンのクライスラーとか言われてもね〜、って感じですよね。ピアノ曲に疎いみっちですが、それでもシューマンは多少持っていて、誰かのなかったかなと探して出てきたのが、ユーリ・エゴロフのCD。両者を聴き比べながら、やはりアンゲリッシュがガチャ弾きしないことを確認しました。第1曲でエゴロフが左手の和音をガンガン突き入れて切迫するところ、これはエゴロフに限らず普通そのように弾かれる曲だと思うのですが、アンゲリッシュは非常にコントローラブルなバスで、上部の細かい音符が織りなすアラベスク模様を克明にしかも繊細なニュアンスをもって浮き立たせています。こんな忙しいところでこんなことやってる人ほかにいるんだろうか? これが最後まで続き、なんというか、一皮も二皮もむけた演奏。とはいえ、この時期のシューマンのピアノ曲には、この時期にしかない情熱的な飛翔感があって、フロレスタンとオイゼビウスの例えでいえば、フロレスタンどこ行った?的な感じも少しあります。エゴロフの存在意義もそこに見出だせそう。アンゲリッシュのブラームスがよかったのは、逆にこうした音楽性が曲にぴったりハマったからかもしれない。いずれにしろ、アンゲリッシュのシューマンをもっと聴きたかった。惜しい、つくづく惜しい。
 

ショパンは、演奏会のアンコールということで(爆)。いや、すごくきれいですよ。とくに10番。味わい深く磨き抜かれている。ただ前の2曲と規模的にバランスが取れてないし、これがショパンなのかと言われると、少なくともコンクールで大見得を切るような、かっこいいショパンらしさではないかな、と。

posted by みっち | 16:04 | CD・DVD | comments(0) | - |
オネゲル「クリスマス・カンタータ」の聴き比べ

・ジャン・マルティノン指揮、フランス国立放送管弦楽団、フランス国立放送合唱団。バリトン独唱:カミーユ・モラーヌ。オルガン:アンリエット・ピュイグ=ロジェ。1971年録音 ERATO 0825646154975


・ティエリー・フィッシャー指揮、BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団、BBCウェールズ・ナショナル合唱団。バリトン独唱:ジェームズ・ラザフォード。2007年のライヴ録音 Hiperion CDA67688

 

この時期になると聴きたくなるのがオネゲルのクリスマス・カンタータです。ちなみに、やはりこの時期になると放送される映画『ホーム・アローン』のテーマ曲、♪ソーミー、ソーミー、ドーーソーーというアレですが、元ネタはこの曲じゃないかと思うくらいよく似ています。オネゲルのクリスマス・カンタータではほぼ中間の転回点ともいえるところで児童合唱が2回入るのですが、この天使のような讃歌のメロディーがソーミー、ソーミー、ラーシドシラシソーなんですよ。
 

この曲の録音は少ないみたいで、ウィキペディアに挙がっているのは10種類。その中でも手に入るものは限られています。これまでフィッシャー指揮のハイペリオン盤を持っており、4年前にエントリしていましたが、先日エントリしたマルティノン・ボックスにこの曲が収録されており、これで比較ができるぞ。まずタイミングですが、フィッシャー盤が24:46、マルティノン盤が23:50で約1分差。基本的なテンポはそう変わりませんが、マルティノン盤はメリハリが大きめで、ところどころ目立って速いところがある。
 

冒頭、オルガンの低い持続音から始まります。ここの出力レベルがまず違う。フィッシャー盤はごく静かに、マルティノン盤ははっきり。ここから低弦がうごめき出すところで、けっこう年代差を感じます。フィッシャー盤はライヴというのに質感、立体感ともに優れ、動きが見えるしダンゴにならない。さすがはハイペリオンの優秀録音。マルティノン盤はこれだけ聴けばそうでもないですが、比較すると音の小さいところの鮮度が落ちている。ただ、マルティノン盤は熱量がかなりあります。曲の前半では、フィッシャーは落ち着いたインテンポで迫ってくるのに対し、マルティノンは「パシフィック231」を思わせるような白熱ぶりで、クライマックスで出る児童合唱が転回点として軽快に。これはもう趣味の違いf^^;。


不穏な前半から一転して後半は明朗になるのですが、ドイツ語とフランス語で交わされるキャロルに「きよしこの夜」が混じってくる、ここの扱いも違いますね。マルティノンは「きよしこの夜」のメロディーラインが出るところからくっきり聴かせるのに対し、フィッシャーは、1コーラスまでは裏に回って目立たせず、テノールにメロディーが移ってから前に出てくる。あれ、「きよしこの夜」歌ってない?と思わせておいて、そうその通り!みたいな感じ。個人的にはフィッシャー盤が効果的だと思います。バリトンソロも対照的で、フィッシャー盤のラザフォードは深いバス・バリトンである種秘教的な雰囲気を打ち出すのに対して、マルティノン盤のモラーヌは軽い発声でシャンソンぽい。1回だけあるボーイソプラノのソロはマルティノン盤が美しい。


3拍子に入ってからの浮き立つような高揚はどちらも素晴らしい。締めくくりのオーケストラの後奏は、例の「ホーム・アローン」で輝かしく始まり、次第に遠ざかって冒頭のオルガンに収斂されていきますが、ここでも録音差がものをいっており、マルティノン盤はちょっとカサついた感じになっています。
 

そういうわけで、解釈的には趣味の違いといっていいですが、録音差でフィッシャー盤の勝ち。フィッシャーという名の指揮者は何人かいますが、ティエリー・フィッシャーはスイス出身ということで、オネゲルは「お国もの」になるんですね。いつかオネゲルの管弦楽曲全集とか出してくれないかな。

posted by みっち | 10:35 | CD・DVD | comments(0) | - |
ブルックナー・コレクション(2017年改訂版)

Profilレーベルから出ていたブルックナー・ボックス(23CD)。収録されているのは、交響曲のほか、合唱作品、オルガン作品、室内楽作品、ピアノ作品で、コンプリートとまではいかないかもしれませんが、このボックスひとつでブルックナー作品のほとんどが網羅されています。加えて、交響曲第9番のフィナーレ補筆完成版(ゲルト・シャラーによる)も収録されていて、交響曲全集として考えてもけっこう安かったのでポチってました。曲目リストを挙げるとそれだけで長くなるので、ここでは交響曲だけ並べます。


・交響曲ヘ短調「試作」:シャラー/フィルハーモニー・フェスティヴァ(2015年録音)
・交響曲ニ短調「0番」:シャラー/フィルハーモニー・フェスティヴァ(2015年録音)
・交響曲第1番ハ短調(キャラガン校訂による1866年リンツ版):シャラー/フィルハーモニー・フェスティヴァ(2011年録音)
・交響曲第2番ハ短調(キャラガン校訂による1872年版):シャラー/フィルハーモニー・フェスティヴァ(2011年録音)
・交響曲第3番ニ短調(1889年版):クラウス・テンシュテット/バイエルン放送響(1976年録音)
・交響曲第4番変ホ長調(1878/80年版):クルト・ザンデルリング/バイエルン放送響(1994年録音)
・交響曲第5番変ロ長調:ギュンター・ヴァント/ベルリン・ドイツ交響楽団(1991年録音)
・交響曲第6番イ長調:ベルナルト・ハイティンク/シュターツカペレ・ドレスデン(2003年録音)
・交響曲第7番ホ長調:シャラー/フィルハーモニー・フェスティヴァ(2008年録音)
・交響曲第8番ハ短調(ハース版):クリスティアン・ティーレマン/シュターツカペレ・ドレスデン(2009年録音、2枚組)
・交響曲第9番ニ短調:ギュンター・ヴァント/SWRシュトゥットガルト放送響(1979年録音)
・交響曲第9番ニ短調(シャラー補筆完成版):シャラー/フィルハーモニー・フェスティヴァ(2016年録音、2枚組)

 

全11曲中、シャラー/フィルハーモニー・フェスティヴァ盤が6曲と半数以上を占めていますが、初期の4曲以外は7番と9番で、おまけに9番にはヴァントによる通常の3楽章版も収録されています。個人的にまあ聴くのは4番以降ということもあり、それほど目立つ感じはしません。シャラー盤の中では、7番はこの人に合っている感じがしました。初期の曲はよく知らないし、版についても違いがわからない(どれ使ってもそんなに変わらないんじゃ?)こともあり、あまり物が言えません。
 

9番の補筆完成版については後で述べるとして、先にシャラー以外の演奏について簡単に。収穫だったのは、テンシュテットの3番。ブルックナーというと「悠揚迫らず」で遅いほど立派みたいな傾向もありますが、この演奏はベートーヴェン的といっていいような、テンポ速めで適度に引き締まって説得力がある。この曲で初めていいと思えました。ザンデルリングの4番、ハイティンクの6番はいずれも貫禄。ヴァントは違うオケで5番と9番ですが、5番はギクシャクしてなんか変。ベルリン・フィルを振ったCDを持っていますが、あっちの方がよかった。9番はヴァントらしい厳しい造形と輝かしい表現で見事。問題なのはティーレマンの8番。この人のCDは持っていなかったので楽しみだったんですが、全然つまらなかった。うーん、どういうこと? 唯一印象に残ったといえば、スケルツォ主部の盛り上がりでヴァイオリンの持続音を一瞬ピアニッシモに落とすこと。これは楽譜に指定があるんでしょうか? 悪いけど、やらずもがなの小手先の技のような。オケにも魅力がないのは録音のせいか、それともダメになったのか? いろいろ疑問が残る演奏です。

 

シャラー vs ボッシュ 補筆完成版対決
さて、9番フィナーレの補筆完成版(シャラー版)です。手持ちに以前エントリしたボッシュ/アーヘン響の2007年録音(サマーレ、フィリップス、マツーカによる補筆完成版のコールス/サマーレによる2006年修正版)があるので、まずタイム表示から比較します。参照用として同じボックスからヴァント盤のタイミングも並べてみました。

 

・ボッシュ:19:56 10:46 18:49 20:19 約70分
・シャラー:25:54 10:59 24:04 24:40 約83分
・ヴァント:23:55 10:23 23:46

 

ご覧のように、ボッシュとシャラーでは演奏時間で10分以上の差があります。はじめの3つの楽章ではシャラーとヴァントの時間が近く、シャラーが特別遅いわけではありません。つまりボッシュがずいぶん速い。
 

ボッシュ盤のエントリでも書きましたが、ボッシュはこの曲を4楽章構成として見ています。おそらく、この発想はいままでなかっただろうと思います。ブルックナーがこの曲を4楽章として構想していたことはまず疑いないところ。しかし、3楽章までしか完成しなかったため、1と3の「両端楽章」に比重をかけて終結感を強調する演奏が一般的でした。だけど、それはあくまでも便宜的な措置であり、フィナーレが存在するならボッシュの解釈こそが本来のものだろうという、従来の「常識」の転換を迫っています。一方のシャラーは、ヴァントと近似値を示しているように第3楽章まででも成立する従来路線といえます。
 

もちろん、時間配分だけで良し悪しは論じられません。では演奏そのものはどうか。シャラー盤に共通して感じられるのは、音楽を丁寧に再現しようとしていること。それだけブルックナーへの愛情があるということでしょう。それもあってか、テンポは落ち着いた歩みになります。ただ、繊細だけど迫力にいまひとつ欠ける。第1楽章第2主題のように弦主体なところは、いろんな声部を引き立たせてなかなか聴かせますが、金管は常に抑え気味で物足りない。ブルックナーの魅力って、巨人が岩石を投げ飛ばし合うみたいな宇宙的スケールの快感があると思うのですが、そういう豪快さとは対照的なのがシャラーの演奏。仮に第3楽章までの演奏として捉えると、タイミングの近いヴァント盤に聴き劣りしてしまう。
 

そして、補筆完成されたフィナーレですが、シャラー版はテンポが遅めなだけでなく。おそらくボッシュのものより小節数も多いようです。あれこれ組み込んで、推移を滑らかに聴かせようとしているのかな。でもそれが必ずしもいい方向に働いているとは言い難い。むしろ劇性が減じてぬるさになっている憾みがあります。ボッシュ盤では、豪壮な響きがこれぞ紛れもないブルックナー、と思わせてくれるんですが、シャラーにはそれがない。曲の半ばからブルックナーの筆になる部分が少なくなるようで、両者の違いも大きくなっています。展開部の二重フーガなどの充実ぶりはシャラーの方に感じますが、再現部のボッシュはスケール感とテ・デウム音型の効果的な使い方で引きつけます。
 

コーダはどちらも二部構成で、共通して前半がカタストロフ、後半が讃歌という分け方が可能ですが、終わらせ方は両者まったく別物。シャラーはその前半を第1楽章冒頭の再現から始めるので必然的に長い。後半は、第8番の終わり方を踏襲して、これまでのモチーフを同時に鳴らすのですが、いろんなことをやりすぎていてカオス状態。トランペットがヒャラヒャラしてチンドン屋っぽいなど、8番の水準にも至っていません。かたやボッシュは、前半では第1楽章第1主題を第3楽章のクライマックスと合わせて端的にカタストロフを作り、後半は第7番の第1主題に由来する付点音符による下行跳躍から順次上行するモチーフ一本で頂点を築きます。このモチーフは第3楽章でもあちこち出ていて、フィナーレを暗示していたともとれるものなので、ごく自然な流れで簡潔ながら十分な高揚を示します。直球勝負が潔く、個人的にはブルックナー本人がやってもここまでうまくできたかどうかと思ったり(爆)。ひとことで言えば、8番もどきのシャラー対7番の延長線上のボッシュ。この勝負は、ボッシュの勝ちと見ます。
 

交響曲以外もひととおり聴きましたが、シャラーはここでも合唱曲やオルガン曲などを精力的に録音していて、ブルックナー大好きなんだろうなと思わせます。でも、いちばん耳に残っているのは弦楽五重奏曲ですねf^^;

posted by みっち | 23:14 | CD・DVD | comments(0) | - |
ジャン・マルティノン 1968-1975 ERATO & HMV 後期録音集

・ルーセル:「バッカスとアリアーヌ」、「くもの饗宴」、交響曲第2番、交響曲第3番、バレエ音楽「アエネアス」ほか
・ピエルネ:バレエ音楽「シダリーズと牧羊神」、ハープと管弦楽のための小協奏曲ほか
・プーランク:オルガン、弦楽、ティンパニのための協奏曲、クラヴサンと管弦楽のための田園コンセール
・サン=サーンス:交響曲第3番、交響詩「死の舞踏」、交響詩「オンファールの糸車」
・フランク:交響曲ニ短調、交響的変奏曲
・デュカス:バレエ音楽「ラ・ペリ」、交響詩「魔法使いの弟子」、交響曲ハ長調ほか
・オネゲル:交響的運動第1番「パシフィック231」、交響的運動第3番「ラグビー」、クリスマス・カンタータほか
・イベール:祝典序曲、交響組曲「寄港地」、「架空の愛へのトロピズム」
・フロラン・シュミット:バレエ音楽「サロメの悲劇」
・ベルリオーズ:幻想交響曲ほか
・チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第2番
・シューマン:交響曲第4番
・バルトーク・「中国の不思議な役人」
・ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」

(収録の作曲家・曲目は一部省略しています)

 

独奏:ジャン・ピエール・ランパル(Fl)、リリー・ラスキーヌ(Hp)、マリー=クレール・アラン(Org)、ロベール・ヴェイロン=ラクロワ(Cem)ほか
独唱:カミーユ・モラーヌ(Br)


ジャン・マルティノン指揮、フランス国立放送管弦楽団ほか
 

ICON(ina, Warner Classics) 0825646154975(14CD)

 

マルティノンのERATOやEMI録音などを集めた14枚ボックスをひととおり聴き終わりました。本当ならあと2回くらいは聴いてからエントリしたいところですが、そうなると何年か先の話になってしまいそうなので、ご勘弁願うことにしてf^^;。


曲目としてはフランス音楽が主ですが、ルーセルやデュカスあたりが充実しており、有名どころのドビュッシーとラヴェルが抜かれているのが特徴的。「後期録音」はそういう意味かも。現役時代のマルティノンはドビュッシー録音で名を馳せたように記憶しており、みっちもレコードを持っています。ちなみに、ワーナーのフランスものにはあとルイ・フレモー(12CD)とアルミン・ジョルダン(13CD)のボックスセットがあり、3箱まとめて買っても存外ダブりが少なく(といってもサン=サーンスの3番やフランクの交響曲は盛大にドボン)、CD39枚でマーラーの交響曲全集ぐらいの値段だし音質もかなり良いので、全部買うときっと満足感が得られます。
 

マルティノンとフランス国立放送管の演奏ですが、ひとことでいえば明晰で輝かしい。上に挙げたルーセルやデュカスがそうだし、この二人のまとまった曲が聴けるのは、このボックスの魅力でしょう。プーランクのくっきりした輪郭や、情念的でないけどきわめて美しいベルリオーズの幻想交響曲なども聴きもの。当時のスタジオ録音ならではというか、エラートの「音の作り方」といっていいのかな。左右のステレオ効果が明瞭で、オケの細かい動きや音色の混じり方などが、拡大鏡でも見ているようです。ただし奥行きにはやや欠けるかな。明晰なだけでなく、力感に富んでいることも共通で、「幻想」のフィナーレやフロラン・シュミットの「サロメの悲劇」なども大迫力の轟音が聴けます。オケも見事。


フランス国立視聴覚研究所(INA)所蔵のシャンゼリゼ劇場ライヴが収録(ファリャなど)されており、こちらを聴くと、エラートの録音とは対照的に、ちょっとくぐもった響きながら奥行きがある音質です。でも鮮明なスタジオ録音の後だとちょっと物足りない。
珍らしい曲目があるのも特徴。ベルリオーズの「レリオ」は幻想交響曲の続編的作品ということは知っていましたが、聴いたのは初めて。でもこれ、朗読なんですよね。フランス語がわからないとどうしようもない(ーー;)。チャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番も初めて聴きました。チャイコどうした?といいたくなるような長くてまとまりのない音楽で、録音されない理由がわかりました(ーー;)。イベールの祝典序曲も「珍」でしょう。日本の「皇紀2600年奉祝曲」として書かれた音楽で、めったに聴く機会がありません。


シューマンの交響曲第4番はEMI音源で、ジュネス・ミュジカル世界管弦楽団という若手演奏家のオケらしい。マルティノンは「近現代もの」という印象があり、こういう曲も振っていたのかと意外な感じですが、これが素晴らしい。弦と管のブレンド具合、とくに金管が遠くから重なるように響く遠近法が見事で、掘り出し物です。音質的にもしっくりきます。

posted by みっち | 20:12 | CD・DVD | comments(0) | - |
マニャールの交響曲(その4)

・マニャール:交響曲第4番嬰ハ短調 作品21


ジャン=イヴ・オッソンス指揮、BBCスコティッシュ交響楽団
録音:1997年12月16-17日

 

Hiperion dyad CDD22068(2CD)

 

マニャールの交響曲を聴いてきましたが、これで最終回です。作品21といったらまだまだ初期?とか思ったりしがちですが、マニャールの場合、ウィキペディアには作品22までしか書かれてません。このあとひとつだけ。第4番は前作第3番から17年後の1913年に完成しており、その間に10しか作品番号が進んでないって、どういうこと? しかももう最晩年です。完成の翌年9月にドイツ兵との戦闘で落命してしまったマニャールは、この曲の初演を聴くことができませんでした。残念すぎる。


第4番はオッソンス盤では収録時間が35分40秒で、4曲中第1番に次いで短いのですが、内容的な充実でいえば、これが最高かもしれません。
 

第1楽章 Modéré (中庸に)
序奏があります。第3番よりも短めですが、大きな広がりを感じさせ、全曲を統一する重要な役割を持っています。悲劇的な開始から木管の上昇スケール、そしてピッコロに現れるのが統一動機。この動機は他の楽章でも循環的に扱われます。弦のうねるような動機もかっこいい。

 

主部、第一主題は劇的な性格で前へ前へと突き進みます。トランペットの経過句を経て、柔和な第2主題がヴァイオリンに出ます。展開部は闘争的で、経過句が転調しつつ繰り返されると第2主題となり、さらに序奏の音楽となります。再現部はほぼ型どおりですが、より激しさを増しています。コーダではハープのきらめきから曲調が明るくなり、高揚したのちに弦による統一動機で静かに終わります。

 

第2楽章 Vif(速く)
弦主体のスケルツォ。マニャールのスケルツォは二拍子系が特徴です。後半にかけて力感に富む表現となっています。中間部はヴァイオリン・ソロが民謡調で、オーボエが引き継ぎます。主部が戻り、中間部は短くもう一度出ますが、主部の動機が引き伸ばされ、そのまま休みなく第3楽章につながっています。

 

第3楽章 Sans lenteur et nuancé (滑らかに、ニュアンスに富んで)
静かに始まりますが、やがて不穏なざわめきから興奮し、統一動機で穏やかに締めくくる、というパターンが3回繰り返される、大括りな変奏曲と見ました。2回目は前半が三拍子系となり、フルートソロのモノローグが印象的。統一動機は金管に出ます。3回目は、弦の小刻みな進行から低弦が大きく歌います。最後の統一動機は弦で、ハープの余韻が残ります。

 

第4楽章 Animé(動いて)
勢いよくダイナミックな性格の第1主題が弦に出て、木管に引き継がれます。息長く歌う経過句から統一動機の変形が現れ、これが第2主題の役割を果たします。展開部では突撃ラッパが鳴ってフガートが開始、トランペットがなだれ込むように入ってきて豪快な音楽です。第2主題(つまり統一動機)はここでは暗示にとどまります。再現部はにぎやかで祝祭的に変化しており、第2主題が大きく扱われて高揚、壮大に盛り上がります。全休止から全管弦楽でのコラールとなり、宇宙的なスケール感を表出。最後は統一動機で穏やかに結びます。

 

 

いやあ、素晴らしい曲ですね。ブルックナーとマーラーのいいとこ取りみたいなf^^;。こんなこと書くとパクリかと誤解されそうですが、マニャールの音楽には彼ならではのオリジナリティがあります。むしろ二人に「こんなに短く書けるんだぞ」って教えてやりたいくらい(爆)。つくづく早世が惜しまれます。みっちのマニャール・コレクションはこれで交響曲4曲と室内楽1曲ですが、作品が22までとすれば、すでに1/4はカバーしたことになるわけで。録音さえあればコンプリートできそう。あと少なくともチェロソナタと弦楽四重奏曲くらいは聴きたいな。

posted by みっち | 14:51 | CD・DVD | comments(0) | - |
マニャールの交響曲(その3)

・マニャール:交響曲第3番変ロ短調 作品11


ジャン=イヴ・オッソンス指揮、BBCスコティッシュ交響楽団
 

録音:1997年9月10-11日
Hiperion dyad CDD22068(2CD)

 

ひきつづき、マニャールの交響曲を聴いています。今回は第3番。ウィキペディアによれば「牧歌的」または「田園」という副題が付いているそうなんですが、第2楽章に民謡風な箇所があり、第3楽章が Pastorare だから、そこから付いたのかな? 標題的な音楽ではないし、イメージもそれほどではないけどf^^;。とはいえ充実していて、特徴的でキャッチーなところもあって、これまででいちばん親しみやすいかも。
 

1896年完成ということですから、第2番の3年後で、マニャール31歳。おそらく、マニャールの交響曲中もっとも時間がかかる作品です。ウィキペディアには45分とありますが、オッソンス盤の収録時間は37分33秒。次に長いのが第2番で36分04秒。そんなには変わりません。

 

第1楽章 導入と序曲:Modéré - Vif
第1楽章に序奏が付いたのはこの第3番が初めてで、時間としては2分程度なんですが、この序奏が最大の特徴といってもいいくらいの魅力とインパクトを発揮しています。管のコラール、チェロの幅広い上昇、高弦のトレモロと、宇宙的な広がりを感じさせてくれる点で、ブルックナーを思い出します。実はブルックナーはこういう序奏を書いてはいませんが。ここでのコラールは、ほかの楽章でも出てきて、循環形式的な役割を果たしています。

 

主部に入ると、推進的な第1主題が出て、キビキビ行きます。テンポを落として第2主題部となり、ヴァイオリンにモルデント風な装飾音型が見られるのが特徴的。提示部の終わりに低音で「コガネムシ」音型を出すのがまた面白い。展開部はフガートで、ここで使われるモチーフがマーラーの第4番第1楽章に出てくる音型によく似ています。展開の後半は「コガネムシ」を繰り返して高まります。再現部はだいたい型どおり。コーダでは序奏が戻ってきて、ほの明るくなります。

 

第2楽章 ダンス:Très vif
実質的なスケルツォ楽章。ピッツィカートから弦楽主体で軽快に始まり、次に木管で同じような進行をなぞります。民族舞踊的なエピソードが中間に挟まれているのが特徴で、これはミュゼットらしい。主部はABA'を2回繰り返しますが、2回目はオーケストレーションが変えられているみたい。

 

中間部は静かで、木管の素朴な感じの歌。主部が再現し、ここでも変化がつけられています。ラスト近くで第1楽章序奏を暗示します。第1番、第2番と比較して、手法が洗練されてきていると思いました。

 

第3楽章 牧歌:Modéré
パストラーレですが短調で、オーボエ・ソロが哀歌を奏でます。低弦に鋭く不穏な動きが出て、これが後に発展します。ヴァイオリンが歌を引き継ぎ、再びオーボエ・ソロとなりますが、不穏な動きからテンポが上がって悲劇的に盛り上がります。ヴァイオリンに歌が戻って静かになりますが、不穏な動きは終わり近くにも出てきます。

 

第4楽章 終曲:Vif
一転して、祝祭的でにぎにぎしい音楽。途中でチェロにフルートが絡む推移が印象的。この演奏では、提示部を繰り返しているようです。展開部では、冒頭の再現からパッと転調しつつ、第1楽章の序奏主題をトロンボーンが吹きます。これとこの楽章の主要主題の変形の掛け合いのようになって、再現部へ。コーダに入ると、第1楽章の序奏が再び回帰して高揚していきます。まだ逆らうかのように主要主題の変形がトランペットに短調で鳴らされますが、序奏主題に収束していき、壮大に終わります。

posted by みっち | 21:14 | CD・DVD | comments(0) | - |
マニャールの交響曲(その2)

・マニャール:交響曲第2番ホ長調 作品6


ジャン=イヴ・オッソンス指揮、BBCスコティッシュ交響楽団
 

録音:1997年9月10-11日
Hiperion dyad CDD22068(2CD)

 

マニャールの交響曲を聴いています。第2番は彼の交響曲中、唯一の長調作品。完成が1893年とのことで、第1番が初演された年になります。マニャール28歳。この第2番では各楽章に簡単なタイトルが付けられ、速度や表情の指示が通例のイタリア語からフランス語に変わっています。母国語の使用はシューマンを思わせます。結果的に全4曲というのもシューマン、ブラームスと同じですね。

 

第1楽章 序曲:Assez animé(かなり活発に)
ソナタ形式。序奏なしでヴァイオリンにきびきびした第1主題が出ます。冒頭から各声部が対位法的に絡み合いながら進行。チェロの経過句があり、総休止すると第2主題部? テンポを落として木管の不思議な響きやヴァイオリンの優美な応答などが交わされますが、メロディーとしてはあまりはっきり聴き取れません。


第1主題の拡大型から展開部。ここでも対位法的な音楽で、順番に第2主題部の要素も出てきて静かになります。印象的なオーボエ・ソロがあり、ここはまだ展開部よね。きびきびした進行が戻ってくるところから再現部と思われますが、短縮されており、第2主題部は暗示にとどまります。コーダでは、新たな展開風となり、二拍子と三拍子が入れ替わるリズム変化も見せながら明るく結びます。

 

第2楽章 ダンス:Vif(速く)
初演で不評のために新しく書き直された楽章らしい。三部形式ないしはA・B・A・C・A・B・Aの軽快な間奏曲。ちょっととりとめがない感じもします。中間部は短いですが、フルートの特徴的な音型をバックにホルンからヴァイオリン独奏につながる部分は美しい。後半に入るとぐんぐん白熱し、中間部を回想してパッと終わります。タイトルのわりにはあまりダンスっぽくなく、むしろスケルツァンド。

 

第3楽章 歌と変奏:Très nuancé(とても微妙に)
長めの主題部(三部形式?)と、変則的ですが3つの変奏からできていると見ました。牧歌的な主要主題はヴァイオリンで、半音階的に下行してまた上行する旋律。これにオーボエが応答する中間部があり、ヴァイオリンが戻って明るくなります。


初めの変奏は三拍子のワルツ風になり、ヴァイオリンと木管との掛け合い。第2変奏はオーボエ・ソロが民謡風に奏し、ヴァイオリン・ソロが続きますが、ここでは不協和音が添えられて表情が変わり、そしてまたオーボエが戻ってきます。このあと三拍子になるのですが、ここは間奏風なエピソード? しばらく茫漠とした和音がつづきます。最後の変奏ではチェロ(とヴィオラ?)に主題が戻り、大きく高揚したのち、落ち着いた雰囲気で楽章を閉じます。
 

第4楽章 終曲:Vif et gai(速くそして陽気に)
ソナタ形式ですが、やや独特な構造。上昇する3つの音が重なる前奏があり、このモチーフは曲の節目に現れます。ヴァイオリンで活発に出るのが第1主題。第2主題はクラリネット(フルートも?)の穏やかな音型で、そのあと小結尾的な部分があるのですが、ここでブルックナーの『テ・デウム』を思わせるようなヴァイオリン音型とコラールが現れるのが特徴的。展開部はおそらく再現部を兼ねており、第1主題に基づく対位法的な絡み合いから小結尾に出たコラールへと向かいます、コーダに入ると、金管の強奏から祝祭的に高まり、冒頭の和音の重なりで全曲を結びます。シューマンの第3番「ライン」のフィナーレと雰囲気が近いかも。

 

第1番と比べると明るく、悲壮味や激しいコントラストには欠けるため、インパクトの点ではちょっと弱い感じがあります。しかし、よく聴いていくと魅力的な箇所がいっぱいで、内容的には充実しています。また、第1番ではかなり念入りな循環形式を取っていましたが、第2番では楽章をまたぐ旋律や動機はあるのかもしれませんが把握できませんでした。総休止やコラールなどブルックナー的な要素がいくつか認められるのも特徴といえそう。

posted by みっち | 10:48 | CD・DVD | comments(0) | - |