・ファリャ:バレエ音楽『恋は魔術師』(全13曲)
・ファリャ:バレエ音楽『三角帽子』(第1・第2組曲より)
ビクトリア・ロス・アンヘレス(ソプラノ独唱)
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮、フィルハーモニア管弦楽団
録音:1961/1964年(恋は魔術師)、1957年(三角帽子)
(WARNAR CLASSICS WPCS-50169)
北九響の次回定期演奏会の演目『三角帽子』を聴くために購入。ファリャの音盤は全然持っていませんでした。手持ちのスペインものは、アルベニスとグラナドスのピアノ曲がちょっとだけ。
ジュリーニとフィルハーモニア管では、ブラームスのLPを持っています。晩年のジュリーニは、きわめて遅いテンポに気品あふれる優雅な演奏を聴かせますが、1960年ごろの彼はそこまで遅くはなく、くっきりした輪郭と気迫に満ちた表現がむしろ推進力を感じさせ、吉田秀和が「ブリオを持った指揮者」と書いていたのをなにかで読んだ記憶があります。後年、シカゴ響を指揮したマーラーをはじめとした一連の「9番」シリーズでは、「シンフォニック」とはまさにこのことかと思わせる壮大かつ緻密な演奏により、一躍日本で巨匠としてもてはやされるようになったのは周知のことでしょう。
さて、壮年時代のジュリーニによるファリャですが、やっぱりすごいね、この人。音がぎっしり詰まって鮮烈。『恋は魔術師』は歌入りで、ロス・アンヘレスの歌唱がまた濃い。『三角帽子』は、第1組曲の「ぶどう」あたりがカットされて短くなっていますが、第2組曲は全部あります。終曲のホタでは、かっこいいシーンの連続で、バシッとくる決めがたまりません。フィルハーモニア管は、当時のオーケストラとしてはニュートラルというか、それほど特徴的な音色を持っているとは思えなかったのですが、あらためて聴くと、木管楽器の音色などいまとなってはなかなか聴けない魅力的なものです。それもジュリーニの指揮あってなのかも。
録音は『恋は魔術師』の方が年代が新しいのですが、金管の響きなどに経年変化を感じさせるのはむしろこちらで、『三角帽子』は全然問題なし。もしかすると、オケか録音スタッフのコンディションに変化があったのかもしれません。日本語解説付きの廉価盤。