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戦争調査会

『戦争調査会 幻の政府文書を読み解く』


井上寿一著、講談社現代新書
 

歴史は好きだけど近現代は客観視が難しく、とくに戦争ものは生々しいため敬遠しています。にもかかわらず本書を手に取ったのは、「幻の政府文書」というキャッチコピーにまんまとはまったから。著者の井上寿一は学習院大学の現学長で、日本政治外交史が専攻とのことです。
 

戦争調査会は敗戦の原因と実相を明らかにすることを目的とした政府機関で、1945年11月、幣原喜重郎内閣のもとで設置されました。戦後の日本政府が自立的にこのような検証の取り組みをしていたことは、あまり知られていない事実でしょう。同調査会は発足から1年足らずの1946年9月にGHQの意向によって廃止され、その成果が日の目を見ることはなくなりました。残された資料や議事録から、同調査会がなにを明らかにしようとしていたのか、読み解こうとしたのが本書です。
 

戦争調査会には政治外交、軍事、財政経済、思想文化、科学技術の5部会が設けられていました。東京裁判と並行して戦犯容疑者の逮捕や公職追放がなされる中で、委員の人選には苦労があったようです。調査会の意義・位置づけに関するGHQとの調整問題もあり、結局これが廃止の原因となっています。敗戦直後に多くの公文書が破棄・焼却されるという困難もありました。最近の防衛省や財務省などの公文書管理問題は、いまに始まったことではありませんでした。軍事部会は結局一度も開催されなかったりと、バラツキはありましたが、現地調査も含めて網羅的・精力的に取り組まれています。調査会資料で不足している箇所は、著者が他の研究から補いながらおおよその姿をまとめ上げています。
 

「はじめに」にも書かれていますが、これらから浮かび上がってくる戦争への経過や実相は、現在までの研究を覆すようなトピックや新事実の発見ではありません。アメリカに勝てると誰も思っていなかったにもかかわらず、ずるずると開戦への道をたどり、開戦からわずか半年で敗勢に陥りつつも、やはりずるずると降伏を先伸ばしして未曾有の犠牲を出すに至った経緯は、いまさら聞くのもつらい話です。しかし、そうだとしても、他国からの圧力や押しつけではなく日本が自ら戦争原因を調べて解き明かそうとしていたことには重みがあります。とくに総裁・幣原喜重郎の不戦の決意が強調され、これが調査会設置となり、憲法第9条にも結びついたことは疑いないでしょう。少なくともこの点については、本書が刊行された意義と同時に、いまこれを読む理由があると感じました。

posted by みっち | 20:42 | 読書 | comments(2) | trackbacks(0) |
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コメント
書籍のご紹介ありがとうございます。
「ずるずると」誰も止められないままに…
こういう歴史や社会は繰り返してほしくありません。
2018/05/09 02:15 by モト
もしかしたら、モトさんはもう読んでらっしゃるかと思っていました。

ずるずるといってしまった原因は、やはり保身とセクショナリズムということになるんでしょうか。
この種の本を読むと、そのとき自分だったらどうする? ということを問われますね。
2018/05/09 18:21 by みっち
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