一週間の滞在後、二人は裂け谷を後にし、トロルの宝を掘り出して、ガンダルフと分け合います。ホビット庄に帰り着いたのは、6月22日でした。村ではビルボは死んだことにされて、お山の家財がせり売りにかけられているところでした。ビルボの帰宅は、サックビル・バギンズ一家との不和の始まりでもありました。
物語の最後は、何年かたって、秋の晩にガンダルフとバーリンがビルボを訪ねてきた場面で締めくくられます。バーリンは、湖の町の統領が、黄金を持ち逃げして荒野でのたれ死んだことを告げます。
トールキンは、五軍の戦いのあと、第18章「帰りの旅」と第19章「もとの古巣」の2章をあてて、ビルボの帰還と後日談を語っていますが、作中ビルボが自分の冒険を「ゆきて帰りし物語、あるホビットの休暇の記録」として書き記しているのと同様、冒険に「行く」だけでなく「帰ってくる」ことをかなり意識しているようです。これは、『指輪物語』でも同様で、というよりさらに重視されていて、ペレンノール野の合戦のあと指輪が棄却されてサウロンが滅んでから、さらに5章が語られます。