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お気楽妄想系のページf^^; 荒らし投稿がつづくのでコメントは承認制としました。
イギリス民謡による6つの練習曲
ヴォーン・ウィリアムズの標記の楽譜を取り寄せました。音源がないため、ピアノ譜を妻に頼んでざっと弾いてもらい、どんな曲か確認しました。いつもありがとうf^^;。

どの曲も短く、チェロ譜だと6曲分で計4ページしかありません。あんまり難しくなくて、プログラムに組めそうな曲ということで、4曲目を候補にしました。あと5曲目もいい感じです。

レント、ト長調、4分の4拍子。ピアノの前奏が3小節あり、これがなかなか印象的です。チェロはD弦主体で、穏やかかつ伸びやかに歌います。ちょっと「ロッホ・ローモント」(これと「五番街のマリーへ」がそっくり)や「グリーンスリーヴス」を思わせる、いかにもイギリス的な風情を湛えています。ただ、リズムは単純でなくて、たゆたうように変化し、最後は高いフラジオレット(?)となって消えていきます。長さは2分あるかどうかぐらい。

この曲を最初に持っていき、リムスキー「バラとナイチンゲール」、フォーレのソナタ、というプログラムはどうでしょうか。並べてみるとこうなります。

1. ヴォーン・ウィリアムズ:『イギリス民謡による6つの練習曲』より、第4曲レント ト長調
2. リムスキーコルサコフ:『バラとナイチンゲール』 モデラート ト短調 
3. フォーレ:チェロソナタ第1番より第3楽章 アレグロ・コモド ニ長調


有名曲がなく、お子様向き、とはいいにくいところがありますが、はじめの2曲は短いし、民謡調またはアラビアンナイト風なので親しみやすさはあるかと。ト長調レント、ト短調モデラート、ニ長調アレグロという並びは、調性も合っているし、「序破急」という感じでいいのではないか、とひとりほくそ笑むみっちf^^;。取らぬ狸のなんとやらとはこのことです。構(妄)想するのは楽しいけど、ちゃんと弾けるようになってから笑おう。でも、そんなこといってたら笑える日がこないかもー(爆)。
posted by みっち | 09:29 | cello | comments(2) | trackbacks(0) |
『墓場鬼太郎』
フジテレビの深夜枠で放送してたこと、知りませんでした。早いところはもう最終回がすんでしまったようですが、わが家はテレビ西日本だったおかげで、なんとか水曜日(実質木曜日)の放送を録画してホビットといっしょに観ました。「早く教えてよー」とホビットに苦情を言われました。そんなんいわれてもねー。みっちはここで苦情を申し立てておきます。「だれか、早く教えてよー」。

第10話「ブリガドーン」。漫画家の水木しげる(つまり作者本人)が喫茶店で鬼太郎たちを見つけ、妖怪ならネタになるだろうと自宅に招くのですが、そのころ東京にブリガドーン現象という怪しい黒雲が近づいていて、というお話。あっという間にブリガドーンに包まれてしまった水木家が、お化け社会で暮らすことになります。

「人魂プロパン」に「お化けタイムズ」、「不死身テレビ」、イケてました。水木家の女の子を遊びに誘いに来る傘化けや一つ目小僧もかわいい。本当だったのかどうかも不確かで怪しい体験が、もしかしたらあのまま元の現実に戻らない方がよかったんじゃないかと思えてくる、そういう微妙さが余韻となっています。水木しげるのお話って、こんな感じですよね。ただ、ちょっと尺が短すぎる感じが。せっかく味のあるキャラクタがたくさん出ているのに、見せ場が少ない。1時間なくてもせめて45分あったらもっとよかった気がします。
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posted by みっち | 18:08 | お気楽妄想系 | comments(0) | trackbacks(0) |
カーボン・エンドピン
見附さんのサイト「vcyoyoの工房」で数種のチェロ用エンドピンを購入して使っています。いま持っているのは、チタン・真鍮のハイブリッド、チタン・タングステン・真鍮の三重構造、カーボンの3種。どれも特徴があって、曲や弾く状況などに合わせて使い分けしています。

カーボン製は、金属製と比べて非常に軽いのが特徴です。この軽さの恩恵は、楽器の持ち運び時に実感されます。音は、雑味のないすっきりした響きで、合奏や軽めの曲にはよく合うと思います。ただ、素直な反面、アピール性には乏しいので、バッハの無伴奏やソロ向けの曲では金属製で響きを増強した方がいいように思っています。

で、しばらくぶりにサイトを見たら、太さ16ミリというカーボン製のエンドピンが出ているではありませんか。詳しくはこちら。いわく、「いままでのカーボンの音とは全く違います。音の豊かさ、野太さ、安定感!! 驚きのカーボンです。」。16ミリというと、ふつうは8ミリですから2倍。……、このエンドピンがみっちを呼んでいる(爆)。

そういうわけで「vcyoyoの工房」を新たにリンクさせてもらいました。
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posted by みっち | 18:15 | cello | comments(0) | trackbacks(0) |
ブログ開設2周年
きのうで「夕陽の窓」2周年となりました。読んでいただいているみなさま、ご愛顧ありがとうございます。

妄想ネタを増やす、という昨年の目標でしたが、結果はやや不完全燃焼でした。というか、妄想ネタよりもLotROネタが圧倒的に増えてしまった、というのが実態です(爆)。いまやLotROネタは、チェロネタ、ウィキペディアネタ、音盤ネタと並んでみっちブログ「四強」の一角を占めております。

とはいえ、LotROもだいたい書いてしまった感があり、ゲームはつづけるとしても、エントリに採り上げることは今後少なくなると思います。以前は当面するクエストを達成するのに必死でしたが、このごろは、要領がある程度わかってきて、ロールプレイしておられる方と調子を合わせたり、比較的初期のフェローシップの助っ人をやってみたり、「中つ国」での行動そのものを楽しんでいることが多くなってきました。トールキンファンでまだゲーム未体験の方は、これからでも遅くありません。LotROで「中つ国」の世界を味わってみませんか?

さて、恒例となりました、「アクセス解析」の検索文字列ベスト10を発表させていただきます。「夕陽の窓」をどんなキーワード検索からご覧いただいているのか、これで丸わかりですよ。わかってどうする、というわけでもないんですけど(って、またまた1年前のコピペf^^;)。
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posted by みっち | 17:40 | お気楽妄想系 | comments(3) | trackbacks(0) |
リムスキー=コルサコフのチェロ曲
今年が没後100年というリムスキー=コルサコフのチェロ用楽譜を2曲取り寄せました。「チェロとピアノのためのセレナード」と「バラとナイチンゲール」です。「熊ん蜂の飛行」はなし(ぜったい無理)。

「セレナード」(作品37)は、もともと管弦楽伴奏のチェロ曲のようで、アレグレット、変ロ長調、8分の9拍子の三部形式。ワルツ風ですが、いわゆる「ヨナ抜き」5音階で民謡風でもあります。同じ音形の繰り返しが多いのですが、単純な繰り返しでなく拍がずれていったりきたりする感じ。中間部はなかなかかっこいいです。5分程度でしょうか。

「バラとナイチンゲール」はもともと歌曲なんでしょうか? モデラート、ト短調、4分の3拍子。これも三部形式といっていいと思いますが、かなりコンパクトで2〜3分の小品。こちらは『シェヘラザード』にも似たアラビア風な旋律が新鮮です。細かい音形もペルシャのモザイクやアラベスク模様を想起させて、聴いて楽しい曲だと思います。ただ、その細かい音形を魅力的に弾くのは難しそう。

秋の発表会や音楽祭に向けたプログラムを考えているのですが、フォーレのチェロソナタ1番第3楽章をメインとして、その前にあと1、2曲弾こうと思っています。リムスキー=コルサコフの2曲のうち、「バラとナイチンゲール」を弾いてみようかな。あと1曲、ヴォーン・ウィリアムズ(没後50年)「チェロとピアノのための6つのイギリス民謡」からどれか、という構想です。ただし、どの曲も音源がほとんど見当たらないので、曲想をつかむのにちょっと苦労しそうですが。
posted by みっち | 10:30 | cello | comments(0) | trackbacks(0) |
フェルツ/シュトゥットガルト・フィルによる、マーラーの交響曲第7番

「夜警」のジャケットがいい感じ・マーラー:交響曲第7番 ホ短調

ガブリエル・フェルツ指揮、シュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団
録音:2007年4月23-24日ライヴ
(DREYER-GAID CD21041)


プレートルのマーラーといっしょに購入したのが、これ。5、6とくれば、7を聴きたくなるのが人情というものですf^^;。7番は、3番と並んでマーラーの中でもみっちがとくに好きな曲なんですが、音楽性と音質面と両方で満足させてくれるCDにはなかなか出会えていませんでした。

指揮者のガブリエル・フェルツは、1971年ベルリン生れといいますから、録音時36歳でしょうか。みっちよりかなーり若いf^^;。CDショップサイトでは「鬼才」ともされていて、個性派のようです。マーラー初録音にこの7番を選んだというのは、「おぬし、できるな」(死語?)と思わせます。フェルツがどんな「夜の歌」を聴かせてくれるのかという興味がありました。

 

最初にお断りしますが、このCDは出力レベルが小さく、いつものボリウムだと大太鼓がドーンとなったときくらいしか盛り上がらず、鳴らないオケだと勘違いしてしまう恐れがあります。ボリウムは、いつもの5割増で聴くことをおすすめします。いくらなんでも5割は大げさだろうと思われる方、本当ですからお試しを。

第1楽章。遅めのテンポで始まります。途中から加速し、主部では文字どおりアルグロ・リゾルートの推進力のある音楽。ここに至るまでに印象的だったのが、節の変わり目で「ため」というか、いままで聴いたことのないようなブルックナーを思わせる総休止があります。楽譜がどうなっているのかわからないのですが、このような瞬間はこの後の楽章でもいくつかあって、フェルツの独特さを示すもののひとつではないかと思います。みっちにとっては効果的で、音楽として説得力を感じました。

ホルンは芯のある響きです。チェロがけっこう重視されていて、第1主題につづく経過でもよく聞こえます。この楽章は主部に序奏の音楽が入り込んで渾然となるのですが、そのあたりのテンポの切り替えがくっきりしています。遅いところはたっぷり、速いところはきびきびと、全体としては平均以上のスピードになっている感じ。打楽器の響きが効いています。楽章まん中のあたりで第2主題が広々と歌われるところも美しく、堪能させてくれます。最後の低弦による序奏リズムの疾走も見事。ここはこうでなくては。オケはかなりバランスが配慮されているようで、中低音や金管の響きの残り方を含めてよく練られ、室内楽的といってもいいかもしれません。

第2楽章。夜の行進曲を思わせる曲ですが、活気のある速いテンポをとります。楽しげな夜の散歩という感じでしょうか。CDジャケットになっているレンブラントの「夜警」のイメージと重なります。

第3楽章。ここでも速いテンポをとります。ところどころでテンポを落としたり、例のパウゼのような間をとって引きつけるところがあるのですが、強弱のコントラストはそれほどでもなく、グロテスクさより、軽めでユーモラスな印象を与えます。

第4楽章。ヴァイオリン独奏のアーチ音型からして、親密さがあります。ここでは6番のフィナーレの音型が使われていて、同じ動機がかたや破滅への行進、かたや癒し系(?)という両極端で、このものすごい落差をどうとらえるか、指揮者の解釈が問われる音楽ですが、フェルツはこれは愛(アモローソ)のセレナードだと割り切っているようです。前半は小味な感じですが、後半ではルバートを効かせて表情たっぷりになります。

第5楽章。出だしのティンパニの猛烈な勢いに驚かされます。この楽章で18分足らずの演奏って、ほかにあるのでしょうか。しかし、これまでの楽章の流れとしては、この曲についてよくいわれる突飛さは感じません。途中までは最初の勢いでずんずん進みますが、第1楽章の音楽が戻ってくるあたりから表情がぐっと深くなり、オケの気分も高まっているようです。最後の盛り上がりはとても説得力があります。ここのクライマックスでいったん強烈なディミヌエンドをかけていて、5番のプレートルも似たようなことしてたなあ、と思い至りました。フェルツも「印籠系」なのか(ご老公には若すぎ^^;)。納得の終曲です。終わった後、客席から歓声が沸き起こっています。

2日間の演奏を編集したと思われるライヴ録音なのですが、客席は静かで、最初ライヴだと思わなかったほどです。シュトゥットガルト・フィルは、フェルツの解釈をよく飲み込んでいるようで、完成度が高く、ライヴのアラのようなものはありません。オケの音色としてはさほど個性は感じないのですが、みっちが高く評価するクレツキのマーラーを思わせるバランスのよさで、厚みより清潔感があります。これで出力レベルがもっと高ければ、いうことない感じ。みっちのこれからの愛聴盤になりそうです。

CDのブックレットでは、輸入盤には珍しく、フェルツによるライナーノートの日本語訳が読めます。この曲についての、「楽天家マーラー」、第6番の否定・裏返しという解釈は、うなずけるものです。あと、現在のマーラー人気は決してバーンスタインの功績ではない、などと書いていて強気なところを見せてくれます^^;。これからマーラーを振ろうというからには、その意気やよし、といったところ。このCDを皮切りにマーラー・チクルスとなるようで、次は何番を出すのか、気になります。

posted by みっち | 23:07 | CD・DVD | comments(2) | trackbacks(0) |
カリュドーンの猪
ウィキペディアに「カリュドーンの猪」を投稿しました。汲平さんに新着記事としてエントリしていただいたようで、ありがとうございました。

ボリュームは当初見込んでいたより大きくなりました。それでも「アルゴナウタイ」より小粒なため、その分出典箇所などについても丁寧にやったつもりで、読みやすくもなったと思いたいですが、どんなもんでしょうね。画像はコモンズにいい壺絵がありました。ルーベンスがあったのもよかったです。ルーベンスで片っ端から探してようやく見つけたんですが、「カリュドーンの猪」で探せば簡単に見つかることがあとで判明、という無駄なこともやっています。

脚注はあいかわらず補足説明として使っているので、出典明示のために使うべきという方からは好感を持たれないかもしれません。みっちは、それが成功しているかどうかは別ですが、脚注を出典を示すだけの機能として使うのは面白みがない、という立場なのでf^^;。

前回、4つの原典から狩りの参加者表を作ると書いていたのですが、原典を当たった結果、『イーリアス』にはリストがなく、結局3者比較としています。ただ、英語版を見ると、パウサニアースにリストがあるような感じ(英語がわからないので感じだけーー;)なので、『ギリシア案内記』が読めれば、加筆したいと思っています。期間中に間に合うかどうか不明ですが。ちょっと悩んだのはメレアグロスの伯父たちの扱いです。アポロドーロスでは名前が特定できないので、思い切って表から外しました。

執筆コンテストのC分野は、現在「カリュドーンの猪」とあとひとつしかエントリがなく、このままいけば最低2位は確定ですが、それじゃあちょっとさびしいので、これからエントリが増えることを期待します。加筆も歓迎です。
posted by みっち | 19:29 | Wikipedia | comments(7) | trackbacks(0) |
プレートル/ウィーン響による、マーラーの交響曲第6番

プレートルのマーラー6番・マーラー:交響曲第6番 イ短調

ジョルジュ・プレートル指揮、ウィーン交響楽団
1991年10月10日、ウィーン・ムジークフェラインザールでのライヴ
(Weitblick SSS0079)


5番とともに出たプレートル/ウィーン響のマーラーの6番です。1991年の演奏で5番(5月)と同じ時期のものながら、ホールがムジークフェラインに変わっています。演奏時間は81分あって、CD1枚に収まっているのがありがたい。

ひとことでいうと、生気漲る演奏です。この曲は、終楽章で英雄が三度攻撃されて倒される、というドラマをどうしても意識して聴いてしまうところがあるのですが、プレートルの演奏では、そういう標題的なイメージからは離れて、音楽の持つ魅力を最大限に発揮しようとしているように聞こえます。そういう点で、快楽的といわれる可能性もありますが、これは純音楽的と同じ意味での褒め言葉として考えていいのではないでしょうか。音楽=快楽ですよ。

こういう演奏を聴くと、みっちの尊敬すべき先輩のこんな言葉が思い出されます。「深刻になるな、真剣になれ」(意味違うかもf^^;)。

 

マーラーの6番については、みっちはこれまで、ギーレン/南西ドイツ放送響、ルイージ/ライプツィヒ放送響のCDをよく聴いてきました。ギーレン盤は第1楽章の遅めのテンポや精妙さを感じさせるアンサンブルで聴かせ、ルイージは速い遅いの極端なテンポ設定による異世界の対立的な解釈が面白かったのですが、プレートル盤の出現で、音楽はやっぱりノリだよなあ、聴いて楽しいのがいちばんかも、と思ったりしています。

第1楽章。低弦のリズムが弾み、総奏は威力十分ですが威圧的にはなりません。第2主題の呼吸感は絶妙だと思います。例によって、ところどころで急に間をつめるように煽るかと思えば、節の切れ目ではぐっとためるなど、緩急自在。単調さとは無縁です。中間のカウベルのエピソードは神秘性より牧歌的な味わい。コーダでは、音は鳴っていても拍がどうなったか行方不明になる演奏が多いのですが、プレートルはティンパニの連打をくっきり際だたせていて、手綱を握って放しません。こういう間合いが重要なところは絶対外さず決めてくれて痛快。最後は天馬空を行く勢いで鮮やかに締めます。

第2楽章。ここではスケルツォになっています。テンポは速く、スヴェトラーノフにも引けをとりませんが、やっぱりリズムが弾んで硬直的になりません。これは天性のものかもしれません。「子供の遊び」といわれる部分での木管のチャーミングなこと。反面、その後の哀歌のような部分での皮肉は弱いかも。

第3楽章。弦の主題で半音階上昇のところでディミヌエンドさせ、すーっと翳がさす表出に引き込まれます。こうしたメロディーの歌わせ方は本当にうまい。音楽は終わり近くで急激に盛り上がるのですが、ヒステリックにならず、全体的に祈りのような落ち着きを感じさせます。プレートルならではの味わい。

第4楽章。この楽章だけで30分以上かかっていますが、にもかかわらずというか、全然長さを感じさせません。序奏から第1主題に至るまでの経過は、他の演奏だといやいや進行していくようなところがありますが、ここでは血湧き肉躍る躍動感。第1主題がこれだけ元気いっぱいだと、ドラマ性はどうしても薄くなりますが音楽としての説得力は高い。木管で出る第2主題は一服の清涼剤といった趣。展開部に入ってもポジティヴさが前面に出て、音楽は大づかみに盛り上がっていきます。例のハンマーは、聞こえますが、心臓に悪いほどではありません。プレートルはこういう仕掛けにはさほどこだわっていないようで、音響マニアの方には物足りないかも。ライヴ録音ということもあるでしょう。クライマックスの設計は、削除された第3のハンマー打撃の直前を最高に持ってきています。ギーレンなんかでは、この辺はもう下降線気味なのと好対照です。コーダは敗北や死よりも、やるだけやった充実感というか、助さん格さん、弥七たちがひと暴れした後の悪代官屋敷というか(爆)。

どんなにプレートルのリズム感がよかったとしても、オケがついてこなければお話しにならないわけですが、ウィーン響は、プレートルの自在なテンポにぴったりついています。ライヴながら傷らしい傷はなく、ギクシャクしたり薄くなったりということもなく、マーラーに期待されるスケール豊かな響きを堪能させてくれます。ウィーン・フィルの陰になりがちであまり有名な録音を聞きませんが、大したものです。

音質は5番とほぼ同じです。ただし、ホールの違いもあってか、5番と比較すると少々まろやかでブレンドされた印象。5番のティンパニやチェロの対旋律がくっきりとして見事だったので、よけいにそう感じるのかもしれません。もう少し打楽器が引き立つとよかったかも(って、みっちも音響マニアか)。音楽が静かな箇所ではけっこう客席の咳払いが聞こえます。

posted by みっち | 08:55 | CD・DVD | comments(0) | trackbacks(0) |
プレートル/ウィーン響による、マーラーの交響曲第5番

プレートルのマーラー5番・マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調

ジョルジュ・プレートル指揮、ウィーン交響楽団
1991年5月19日、ウィーン・コンツェルトハウスでのライヴ
(Weitblick SSS0078)


今年のウィーン・フィル「ニューイヤー・コンサート」を指揮して一躍脚光を浴びた、フランスの東野英治郎(爆)こと、ジョルジュ・プレートル。彼がウィーン響を指揮したマーラーの5番、6番のライヴ録音が発売されました。これは面白そうです。第5番から聴いてみました。

第1楽章。出だしのトランペットが乾いた感じで、間合いがせっかちに詰まっていて「まさか、このテンポでいくのか?」と不安になります。ところがその後大音響になるにつれてリタルダンドし、弦の主旋律はたっぷりとしたテンポで歌わせます。主旋律は、低弦の刻みが弾力的で素晴らしい充実感。最初のエピソードでは今度は過激なぐらいにテンポを煽ります。こうしたテンポ変化にもかかわらず、オケはしっかりついていて、各声部がよく聞き取れます。全体を通じてオケに厚みがあり、ティンパニの重量感も相当なものです。とくに弦楽ではチェロの対旋律が際だっているのが○。ライヴのためか、音響バランス上トランペットの叫びが聞き取りにくくなる箇所が部分的にありました。

 

このテンポの自在感は「ニューイヤー」でも聴かれたもので、プレートルの持ち味なんでしょうね。その後も随所に出てきて、次はどうくるのか、という感じで最後まで飽かせず聴かせます。

第2楽章。激しく揺さぶる主部と、第2主題のゆったりしたテンポの対比が強調されます。ここではプレートルのリズム感がよく発揮されていて、冒頭部分や、それが帰ってくる部分などで特徴的な、オケの間髪を入れない合いの手を逃さず見事に決めてくれて快感に浸れます。長い曲なんですが、めくるめく変化に緊張が緩むところがありません。ちなみに、この楽章冒頭の音型は例の「コガネムシ」。♪コガネムシー、は、金持ちだー、ババババという感じで歌ってください(爆)。

第3楽章。ホルンの音はもうちょっとかな、と思いますが、実演では立派なものといえるでしょう。ここでも、要所でテンポを変化させて単調になりません。基本的に同じテンポがつづくところでも、切れ目で一瞬速くし、そこから減速して元に戻すというような技を見せていて、やるなー、という感じ。レントラー風な部分では「ニューイヤー」を思い起こさせ、プレートルとの相性の良さを感じる音楽です。

第4楽章。ハープが美しい。ウィーン響の弦はあまり神経質にならずにきれいな線を描いていきます。主部ではチェロが雄弁で素晴らしい。中間部ではヴァイオリンの憧れの表情が胸を打ちます。プレートルが手練れのオペラ指揮者でもあることがよくわかります。

第5楽章。快速に飛ばします。実演ではちょっと怖いくらいのスピードですが、忙しい低弦も含めて、豪快に鳴っています。途中、第4楽章の中間部が2度戻ってくるところの弦や木管の表情がチャーミングで、ここが曲の節目になっているということがよくわかります。クライマックスのコラールは雄大で輝かしいのですが、ここでディミヌエンドがかかって第2楽章の末尾を回想させ、最後のお祭り騒ぎへと移るところがなんとも効果的。プレートル、やっぱり最後に印籠出してます(爆)。恐れ入りましたー。

ラテン系の指揮者のマーラーというのは、むしろウィンナ・ワルツよりも隔絶感は大きいかもしれないのですが、そんな先入観を完全に吹き飛ばす快演といえます。精神の若さというのは年齢とは関係ないということをあらためて感じさせます。

マーラーになにを求めるかはもちろん人それぞれで、バーンスタインやテンシュテットを「粘着もたれ系」、アバドやブーレーズなどを「流麗すっきり系」として両極と見ると、その中間?にクーベリック(田舎系かと思いきや案外剛直系)、ギーレン(切れ味というより精妙系)、スヴェトラーノフ(トランペットと打楽器と重低音のための協奏交響曲系)、ルイージ(テンポが両極端振幅系)などの個性豊かな面々がいて、よりどりみどりなわけです。そんななか、このCDでプレートルは「お約束の印籠系」(おい)として確固とした存在感を示したのではないでしょうか。

録音はライヴ一発録りらしく、会場のホールトーンがよくわかります。セッションのように個々の楽器を強調したりしないのですが、対位法的なところで声部がよく聞き分けられ、むしろ自然でスケールの大きな響きが得られています。客席の咳払いや拍手のほか、第2楽章が終わった後には弦があらためて調弦している様子も収録されていて臨場感があります。第4楽章からフィナーレに切れ目なしにつづくところでは、咳払いしている人がけっこういました^^;。でも余韻を台無しにするブラボーはありません。

posted by みっち | 18:12 | CD・DVD | comments(10) | trackbacks(0) |
春の執筆コンテスト
ウィキペディアで「Wikipedia:第4回執筆コンテスト」が始まりました。昨年、『ラインの黄金』でエントリして以来の宿題になっている『ヴァルキューレ』を遅くともこのコンテストには出さねば、と思っていたのですが、ぐずぐずしているうちに先に項目を立てられてしまいました。むきー!

「加筆」ではエントリできないため、今回はコンテスト参加を見送ろうかとも思ったのですが、C分野のエントリが全然ない状況で、これじゃあせっかくの「お祭り」が寂しいよね(このままほかにエントリがなければ無風で「1位」だぜ、という下心もf^^;)、というわけで、ネタを考えた結果、「カリュドーンの猪」に決めました。

「カリュドーンの猪」については、実は「メレアグロス」の項ですでに一度書いています。このときはさらっと流れを書いただけなので、今回はグレーヴスやケレーニイの解釈を含めて、単独項目にふさわしい内容と文章量にしようと思っています。といっても、「アルゴナウタイ」ほどの広がりやボリュームは見込めないので、小粒なりに充実した記事をめざします。

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posted by みっち | 18:36 | Wikipedia | comments(0) | trackbacks(0) |