ルオーというと、イコンのような小さな宗教画ばかり描いた人というイメージがあり、それも太い輪郭、暗い色調、盛り上がった絵の具などが特徴として思い浮かぶのですが、実物をちゃんと見たのは初めて。当たっている部分と間違っている部分と両方ありました。
今回数多く出展されていたのが、『受難』の挿絵類で60数点。世界的にみてもこれだけそろったコレクションはないそうです。これらは、青と緑の混ざった不思議な色が背景色として統一されていて、実物は思ったより明るい色調でした。ただ、これらは本の挿絵なので、当然本と同じ大きさで、「イコンのような小さな宗教画ばかり」などの印象はここからきたみたいです。
ルオーの初期作品もあって、これが暗い。しかし、1920年代ごろからスクレイパーで絵の具をそぎ取る技法を用いた作品からは、燐光のような明るさが印象的です。今回もっとも気に入ったのが、画像の1925年に描かれたという『小さな女曲馬師』。実物はもっと明暗が深く、美しい。ルオーがステンドグラス工房出身ということが納得できます。となりの1930年作という風景画もよかった。
『受難』以降は絵の具をふんだんに盛り付けるようになるのですが、激しいのになると、ほとんど立体画というか彫刻になりそうなくらいに盛られています。晩年の作品は、まだ味わいきれていない感じ。子連れだったので、さっさか通ってしまいましたが、またゆっくり時間をとってみたいものです。