売れない役者が伝説の殺し屋になりすます、というのは、役所広司と香取慎吾の『合言葉は勇気』とよく似た設定です。こっちは売れない役者が熱血弁護士を演じる話で、これも面白かった。視聴率的には振るわなかったようですが、『南総里見八犬伝』ネタを随所に仕込んだ展開から目が離せませんでした。
本編ストーリーの3分の2ぐらいまでは、実は俳優だということがいつバレるか、何度かもうダメだろうと思わせておいて、切り抜けてしまうところで笑わせます。笑えましたが、面白かったというより、イタかったという方が正確かも。なにしろ、バレたら命がない状況で本人がそれに気づいていないわけですから。残り3分の1でそれまでに敷いた伏線を存分に生かし、さらなるどんでん返しを用意して最後まで引っ張ってくれるのはサービス精神満点。観て得した気分になれます。
主演の佐藤浩市は、見ている方が現実を知っているだけに、はじめのうち売れない役者としての演技がイマイチな気もしないではありませんでしたが、伝説の殺し屋デラ富樫を演じる段になると、もうおかしさ爆発ですね。ラスト近くで涙を見せるシーンがありますが、ただのおふざけに終わらない、いい場面でした。相方?の寺島進もかっこよくて、なのにボケ役というのがはまっていました。この二人の出来が左右した感じ。建前上は妻夫木聡が準主役なのかもしれませんが、こっちは狂言回し的ポジションなので、あまり印象に残らずf^^;。
舞台はシカゴならぬ守加護(スカゴ)の街(爆)。空間的にほぼ限られた範囲で展開されるシチュエーション・ドラマを得意とする三谷作品にふさわしい、手の込んだセットが作られています。まさに舞台です。これはエンディング・ロールでしっかり紹介されます。
小ネタもいろいろありまして、例えば、前作映画『THE 有頂天ホテル』に出演した香取慎吾が同じ役で出ています。三谷ドラマを観ていると、おなじみとなった役者がどんな風に現れるかも楽しみの一つで、そのあたりもちゃんと期待に応えてくれるのがこの人ならではでしょう。
また、市川崑の生前最後?の監督姿が観られ、そこで撮られていることになっているのが『黒い101人の女』(爆)。実際、黒い服着た女性がぞろぞろ階段を上る場面がありましたが、101人いたのか? 『101匹わんちゃん』がネタになってますが、みっちは別に個人的なネタを思い出しました。昔、「山本直純と100人のオーケストラ」を友達と「オーケストラと100人の山本直純」とか言い換えてゲラゲラ笑っていたんですよね。しょーもないですが、映画で実際にそういうネタをやる三谷幸喜、素晴らしいです(爆)。
あと、この映画は、最初に観るときと、展開がわかった上で見直すときとでは、面白さが違ってくると思います。むしろわかって観た方がより楽しめるんじゃないでしょうか。それぐらい作り込まれているし、一回こっきりではもったいない。