・ワーグナー:楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲
・チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35
・サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調 作品78 「オルガン付き」
矢野玲子(ヴァイオリン独奏)、鈴木隆太(オルガン)
ロッセン・ゲルゴフ指揮、九州交響楽団
2010年11月27日(土)、アルモニーサンク 北九州ソレイユホール
改装成ったアルモニーサンク 北九州ソレイユホールのオープニング記念事業の一環として開かれたコンサートです。旧厚生年金会館のホールにはパイプオルガンが設置されており、今回の改装に伴ってオーバーホールされたそうです。演奏台は丸ごと交換されて、古い演奏台が玄関ホールに展示されています。このオルガンがどう鳴るのか、その興味から妻と行ってきました。
みっちたちは1階中央左よりの席に陣取りました。左前方の壁にオルガンのパイプが並んで存在を誇示しています。画像は携帯で撮ったので暗いですが、実物はもっときれいです。あとで思ったのですが、オルガンから離れて座った方がよかったかもしれません。客席には、北九響のメンバーの顔がちらほら見られました。これまで土日は練習が多くて、なかなか演奏会に行けなかったですもんねf^^;。
ワーグナーの「マイスタージンガー」前奏曲は祝祭的で、こうした記念演奏会の皮切りにふさわしい演目でしょう。演奏は、キビキビしたテンポをとりつつ、展開部に入るとぐっと腰を落として木管のパセージを聴かせました。そこから次第にテンポを戻して、あのいっせい再現に結びつけるという構成はなかなかのものです。メリハリよりも内声の充実を重視していたようで、例の特徴的なパンパパパン!というトランペットも抑えめでしたが、みっち的にはここはさらに重量感がほしい気がしました。
指揮者のゲルゴフはブルガリア出身。長身で手足も長く、指揮棒も長いf^^;。まだ20代の若手で、明快で要所を押さえた指揮ぶりは実に颯爽として見えました。ハンサムだし、これから人気が出るのではないでしょうか。ただ、名前がゲルギエフとかぶった感じなのがまずいかも(爆)。
つづくチャイコンでは、地元北九州出身のヴァイオリニスト、矢野玲子が登場しました。白と黒のドレスでこちらも長身です。ここのところよく聴かされる曲で、またかという感じもあったのですが、情熱的でパワフルな演奏ぶりに感心しました。ここぞというところでは上半身だけでなく足を広げてふんばって、どすこい状態になるのを恐れません。ソロがお休みのときも、ヴァイオリンを右手で持ち、左手でこぶしを固めてオケの演奏に浸っている様子は、ちょっと演歌歌手のノリに近いかもしれませんが、みっちは気に入りましたf^^;。なんといっても、全身で共感を表している様子がいいですよね。オケも立派でしたが、もうちょっと反応して白熱してくれるとブラボーの嵐だったんではないでしょうか。終了後、ゲルゴフはソリストに抱きついていました。役得よのう(爆)。アンコールはバッハの無伴奏パルティータでした。こちらはうって変わって静かな演奏。
お待ちかねのメイン曲では、ステージの上手左端にオルガン演奏台が設置されました。オルガンが聴ける管弦楽曲は限られていて、サン=サーンスの3番はその代表といえるでしょう。個人的にはプーランクが聴けたらなあと思いますが、編成が特殊だし、サン=サーンスも1回は生で聴いておかなくちゃ、です。
オケは端麗な響きで、フランス音楽らしさを表現していたと思います。第1部の後半で初めてオルガンが入りました。ここは弱音でオケとうまくマッチしていました。ちなみに、みっちが常に注目するチェロパートはステージ向かって右の中央よりで、その右側がヴィオラという配置でした。先頭二人の弾き方が対照的で、トップの男性は音楽によって右手の動きが激しすぎるくらい変化するんですが、裏の女性は常に同じ調子で柔らかいんですよね。トップともなると、パート全員を引っ張る役割からも動きを大きく見せる必要はあるかと思いますが、同じ曲を弾いててこれだけ弾きぶりが違うのも珍しい。
第2部前半のスケルツォが終わって、いよいよオルガンがハ長調の主和音で入ってきます。でか! 急にオケが遠くなった気がする。実際、パイプの方が近いかf^^;。ここからは豪華絢爛、一種のショー的要素をはらんで進むんですが、ホール左側の席はバランス的にオルガンが勝ちすぎだったのではないでしょうか。ラストで、ティンパニがこれでもか、とぶっ叩いても、オルガンにかき消される感じでした。
ホールを出るとき、今度合唱の伴奏でご一緒することになったオルガニストの方も聴きに来られていたのにお会いできました。お話では、まだ音が硬いそうです。鳴らすうちにホールになじんでくるものらしい。音量的にも出し過ぎだったといわれていました。本番で盛り上がるとついやってしまうのだそうです。まあ、オルガンを聴きたかったので、これはこれで文句ありません。
全般的に、オケがもうちょっと鳴ってくれたらという感じがして、妻にどうだったか聞くと、全然そんなことなかったそうです。「ただ、北九響は必死さが伝わってくるけど」といわれました。どうやら、間近で味わう爆裂演奏に慣れてしまい、ふつうの演奏では満足できなくなったかもf^^;。