・ブルックナー:交響曲第9番ニ短調 (原典版)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮ハンブルク国立フィルハーモニー管弦楽団
録音:1956年10月31日(LPからの復刻)
(Grand Slam GS-2039)
「積ん読」CDだった1枚ものをもうひとつ。ブルックナーの9番はそんなに聴いたことがなく、持っていたのはジュリーニ/シカゴ響(LP)、スクロヴァチェフスキ/ミネソタ響、同/ザールブリュッケン響ぐらいです。それで、久しぶりに聴きたいと思ったのと、ちょうどそのころカイルベルトのワーグナー『指環』のバイロイト・ライヴを聴いて、ワーグナー以外でカイルベルトはどうなんだろうと思ったのと、両方が購入動機でした。
結論から言うと、とても立派なブルックナーです。カイルベルトは、ワーグナーでの印象と全然変わらないですね。リズムの揺れが少なく、テンポを守ってひたひたという感じで進んでいきます。ヨッフムやシューリヒトだと、思わぬところでアクセルやブレーキがかかって驚かされたり、正直付き合いきれんと思ったりすることがあるんですが、カイルベルトでは着実に来たるべきものが来てくれて、しっくりf^^;。それでいて情感にも不足しておらず、よい意味で即物的。無味乾燥なイメージとは全然違います。
オケは響きにコクがあります。管楽器全般、とくにホルンが素晴らしい。第3楽章ラストでの第7番を想起させる音型など、最高だと思います。弦もよく歌って非力さは感じません。ステレオ最初期の録音で、ほぼ一発録りだろうと思われるのと、現代のオケのように機能的に均一化されておらず、多少ばらけた感じはありますが、むしろそれが味です。なお、クルマのオーディオでは低弦が聞き取りにくいので、そこのところは判断ができません。
なお、この曲の第3楽章で7番や8番を回想するというのは、わりとよく知られていると思いますが、実は5番フィナーレのフーガ主題も拡大された形で出てくるんですね。これは、いま5番を練習しているから気づいたことです。あと、シューマンの2番の第3楽章とフィナーレで扱われる半音階的音型もけっこう目立ちます。ブルックナーとシューマンの関係はよくわかりませんが、こういうの、探せばもっといろいろ出てくるのかもしれません。
録音は、すでに一部触れましたが、良好です。LPからの復刻ということで、アタックの立ち上がりが丸くなってしまっているかな、と感じる部分がありますが、鮮度そのものは高く、ヒスノイズなどはまったく気になりません。