ヒコックス/BBCウェールズ・ナショナル管ほかによるスタンフォード歌曲集
2013.09.28 Saturday
・スタンフォード:『艦隊の歌』 作品117
演奏は、1曲目と3曲目にバリトン独唱が入っています。独唱は柔らかい声で、この音楽にぴったりな感じ。ヒコックス指揮によるBBCウェールズ・ナショナル合唱団も同オケも、美しく水準の高い演奏。
・スタンフォード:『復讐』―艦隊のバラード 作品24
・スタンフォード:『海の歌』 作品91
ジェラルド・フィンリー(バリトン)
リチャード・ヒコックス指揮、BBCウェールズ・ナショナル合唱団、同管弦楽団
録音:2005年7月6-8日
(CHANDOS ANNI 0030 「シャンドス創立30周年記念ボックス」-21)
またずいぶん間があいてしまった。「シャンドス創立30周年記念ボックス」の21枚目は、アイルランドの作曲家スタンフォード(1852-1924)の管弦楽伴奏による歌曲集。2008年に60歳で急逝した指揮者、ヒコックスのライフワーク・シリーズのひとつらしい。
スタンフォードの作品は初めて聴きました。ヴォーン=ウィリアムズやホルストの師匠に当たる存在のようです。3曲ともイギリス海軍にちなんだ詩に付曲したもののようです。イギリスといえばもちろん、かつては「日の沈まぬ国」といわれたほどの海軍国ですから、これを称える詩や音楽はたくさん作られたのでしょうが、スタンフォードが海軍好きだったのか、これらにどのくらい関わっていたのかまではわかりません。聴いてみると、勇ましい部分もときにはあるものの、基本的に穏やかさに包まれた、タイトルから想起されるものからすると案外ふつうの音楽です。少なくとも先の大戦での日本の「うちてしやまん」みたいな悲壮感とはほど遠い世界。
作風としてもどれも平明で、作曲された時代からすれば、きわめて保守的な音楽といっていいでしょう。管弦楽伴奏付きの歌曲といえば、マーラーやリヒャルト・シュトラウスなどの比較的新しい様式のような雰囲気もありますが、合唱曲としては古くはカンタータやオラトリオなどがあり、実質これらとそれほど違わない感じ。作品番号からするとけっこう年代が離れていてもおかしくないのですが、3曲ともそれほど大きく違いません。それでも、いちばん後に書かれたと思われる『艦隊の歌』は、静かで印象的な始まり方からして、年季の入った味わいがあります。英語の歌詞内容がわかれば、より親しめるでしょう。