2. フォーレ:エレジー 作品24
3. フォーレ:蝶々 作品77
4. フォーレ:ロマンス 作品69
5. フォーレ:セレナード 作品98
6. フォーレ:シシリエンヌ 作品78
7. フォーレ:チェロソナタ第2番ト短調 作品117
Vc:ゴーティエ・カプソン
Pf:ミシェル・ダルベルト(1-6)、ニコラ・アンゲリッシュ(7)
録音:2010年7-9月
(Virgin Classics 50999 070875 2 3 5CD)
カプソン兄弟ほかによる、フォーレの室内楽全集の2枚目は、チェロとピアノのための作品集です。
チェロはゴーティエ・カプソン。ピアノはソナタ第1番とそれにつづく小品までがダルベルトで、ソナタ第2番がアンゲリッシュ。ヴァイオリンソナタとは違って2曲のチェロソナタは作曲時期が近く、ピアニストの分担は作品年代というわけではなさそう。単純に、2番以外はダルベルトということ?
ゴーティエ・カプソンのチェロは、豊かで歯切れのよい中低音が特徴で、チェロソナタ第1番の第1楽章では雄渾さをみなぎらせた表現がかっこいい! ただし、高音域の魅力は今ひとつか。例えば第2主題でチェロが一気に高いD音に跳躍する箇所があって、全曲の聴かせどころのひとつですが、ここのインパクトが弱い気がします。ここはpですが、ダイナミクスの問題ではなく、ハッとさせるような凄みがほしいところ。問題は、ダルベルトのピアノがちょっとうるさいこと。ピアノが随所で作るタメが全体の流れの美しさや一貫性をスポイルしてしまっています。コーダの終結部では、第1主題に基づき歌劇『ペネロープ』のオデュッセウスのライトモチーフを思わせる律動がつづくのですが、ダルベルトがここでもブレーキをかけています。ゴーティエはすごく弾けるのでアンサンブルとしては破綻していませんが。ピアニストが動きすぎるとダメなのは、トルトゥリエとハイドシェックの演奏と共通かも。
第2楽章はよく歌っています。ゴーティエの低音の魅力全開。しかしフィナーレでは、再びピアノの念を押すようなフレーズ進行が曲の流麗さを妨げます。展開部のカノンではピアノが前面に出てしまってカノンに聞こえません。ここでも後半ピアノがブレーキをかけるので、絶妙な転調を見せる再現部への移行が散漫な印象に。うーん、もったいない。大好きな曲なので、辛い採点になってしまったf^^;。
2曲のソナタの間には小品が5曲挟まっています。いい方からいうと、「蝶々」から「セレナード」までの3曲は違和感なく楽しめました。とくにチェロの技巧がめざましい蝶々や、深々とした低音を聞かせてくれる「ロマンス」は聞き物。悪い方では、「エレジー」と「シシリエンヌ」。やはりピアノがいちいちタメるのが煩わしく、そうなってくると、ゴーティエがときどき見せる、めざす音のやや低めからこね上げるような、演歌の「小節」に近い手法などまでが耳について素直に曲に入れません。この2曲はふつうに弾けば感動できるはずなんですけどねえ。雄弁と饒舌は紙一重か。
ここまではやや残念な感じでしたが、ピアニストが交代した第2番では一変して素晴らしい演奏になっています。アンゲリッシュのピアノは停滞することなく、チェロと一体化しています。とくにピアノの分散和音の美しさは感動もの。フォーレはこうでなくては。葬送風の第2楽章はエレジーに似た曲調ですが、深みがあって演奏は断然こっちがいい。ダルベルトには悪いですが、全曲アンゲリッシュのピアノならどうだったかと思います。