・マーラー:交響曲第4番ト長調
リンダ・ラッセル(ソプラノ独唱)
アントニ・ヴィト指揮、ポーランド国立放送交響楽団
1992年6月26-8日(第1〜第3楽章)、7月15日(第4楽章)録音
ナクソス:マーラー交響曲全集より(NAXOS 8.501502)
ナクソスのマーラー交響曲全集から第4番を聴きました。ボックスの6枚目に収録されています。演奏時間はトータルで約57分。
ヴィトの4番は、2番、3版と比べると少し印象が違います。これまではマーラーのスコアが見えるような精緻なバランスで各楽器が捉えられていたのが、4番では太めの線で旋律重視のように聴こえます。これは録音のせい? 残響多めのトーンはハラースが指揮した1番に近く、出力レベルも高い。4番は録音時期が早いため、このプロジェクトが始まってからしばらくして音作りを変えたということなのかもしれません。
第1楽章は落ち着いたテンポで始まります。みっちが聴いた中ではスヴェトラーノフに近い遅さ。スヴェトラーノフの場合はそのまま最後まで遅く、異様さが前面に出ますが、ヴィトはまもなく速度を上げて一般的なテンポになります。すでに書いたように、輪郭が太くなったように感じますが、そこはヴィトで、各声部のバランスは失われておらず、かつよく歌います。展開部のフルート4本の斉奏は、第3楽章の高揚部分で使われるだけに、個人的にもっと吹き鳴らしてよかったかな。
中間の2つの楽章は、ヴィトらしいかっちりした感じがよく出ています。オケもよく鳴っています。第3楽章の終わり近くの天啓のようなクライマックスでは、ティンパニの響きがドッスン系で、やはりハラースの1番を思わせます。
第4楽章のソプラノ独唱、ラッセルは明るい声で曲調によくなじんでいます。ただ、どことなくですが、ヴィトのテンポにうまく乗っていないような印象があります。とくに最後はかなり遅いためか、ちょっと苦しそう。ここは、第1楽章冒頭のテンポと符合させているようですが、ヴィト独特の解釈といえそうです。
マーラーの4番は、これまでクレツキ盤とフォンク盤がみっちにとり双璧ともいうべき録音。前者はクレツキならではの高潔なアンサンブルと事故死前のデニス・ブレインによるホルンが聴ける貴重な記録であり、ステレオ最初期ながら録音もよい。後者は、難病のために指揮を続けられなくなったフォンク最後の演奏会録音で、一気に9番のような惜別の情が漂う感動的な演奏です。ヴィト番も決して悪くないけど、これらのインパクトを凌駕するものは今後も出ないだろうと思っています。